[ オピニオン ]
(2016/3/28 05:00)
環太平洋連携協定(TPP)では、商品の原産地がこれまで以上に問われる。大きな影響を受ける業界のひとつが食品だ。TPPの発効時期は米国の大統領選挙の動向に左右されるが、日本としては今のうちに、国産品の世界ブランド確立を急ぐべきだ。
日本は世界でも指折りの食品安全国だと言われる。消費者の意識調査での「割高でも国産品を選んで買う」という率は、先進国の中で群を抜いている。
ただ国産だから高品質だとか、おいしいという認識の根拠はあいまいだ。大手食品メーカーや流通業者は品質管理に気を配り、味覚面でも改良に努めている。とはいえ日常の食品は必ずしも産地や添加物を明示していない。
焼き鳥などはタイや中国で加工しても、日本で調理加熱すれば国産扱いになる。食品を提供する側も「消費者の低価格選好が強い中で、コストを抑える必要がある」などを理由に、あいまいさを許容する部分があった。
TPPでは原産地表示に統一ルールがある。原材料を域外国から輸入し、加盟国で一定の加工をすれば「域内製品」と表示できる。日本でTPP発効後に農産品・食品輸入の増加が予想されることを考えれば、適切な対策が必要だろう。政府はすでに、原材料の産地表示を義務づける食品の種類を増やすことを検討している。
さらに望ましいのは、おいしさと品質を兼ね備えたブランドの確立だ。世界的な食ブランドで知られるイタリアのパルマ・プロシュート(生ハム)やフランスのシャンパンは、地理的表示保護制度で守られている。原料の産地や製法に厳格な定義があり、甘味料や香料を加えることや、規定した地域以外での製造を認めていない。
日本でも政府が「神戸ビーフ」など11品目を地域ブランドに認定するなど、地理的表示保護の取り組みは始まっている。また農産品の国際規格「GAP」導入を政府が支援し、国産品の安全性や品質を客観的に示す取り組みも2016年度に始まる。「おいしくて安全な食の国」をより明確にし、差別化をはかってもらいたい。
(2016/3/28 05:00)