[ 機械 ]

第46回機械工業デザイン賞(5)日本商工会議所会頭賞−ニイガタマシンテクノ

(2016/8/4 05:00)

  • 開発陣と田村常務執行役員(左から2人目)

【横形マシニングセンタHN800−V】

ラスト2台で採算ベースに

販売を中止せよ―。ニイガタマシンテクノ(新潟市)の経営陣は苦渋の決断を下した。対象は、精度と生産性の両立をテーマに開発したマシニングセンター(MC)だ。

早送り速度が毎分50メートル(従来機は同40メートル)、加速度が0・4G(同0・25G)の性能をかなえ、この時点で3台を納入したが、利益を出せる生産技術を確立できずにいた。最も困難な箇所を仕上げるのに、「あと半分に縮めるのが目標」(田村幸夫常務執行役員)とする現在に比べて5倍もの時間を要した。販売中止の決定を受け、仕掛かりの2台を廃棄処分した。

性能を引き出す最大のポイントが「V形スライド」だ。リニアガイドなどを使わずに潤滑油で滑らせる、すべり案内で、案内面をV形にした。一般的なボックス形の案内面で課題となる姿勢の乱れによる精度の低下を抑えられる構造だ。ただ、V形の製造は手作業頼りのため、高額で特殊な機械への採用に限られてきた。これを汎用MCに適用する開発計画。最大のポイントは、最大の難所になった。

経営陣は販売中止を命じた一方、最後のチャンスとして、自社設備向けという条件で、もう2台の開発、製造を許した。この2台で生産技術を確立できなければ開発計画は中止になる。背水の陣の開発部門は案内面との隙間を調整する部分の新構造をひねり出す。「開発、製造の両部門が一体になった」(常平典明社長)上での試行錯誤の結果、採算ベースに乗るめどをつけた。ほどなくして販売の再開に至った。

新型MCは経営上の大きな意味を持つ。同社は前身が15年前に経営破綻した旧新潟鉄工所。「ガタテツ」は原動機部門などがあり、大きな材料をバリバリと粗く削る工作機械を得意としてきた。今も売上高の多くは、そうした用途の業界向けだ。同時に高い精度と生産性が要求される航空機などの新しい市場を開拓中で、新型MCはその戦略機だ。ラスト2台のチャンスをものにし、大空へ高く飛び立とうとしている。(六笠友和)

(2016/8/4 05:00)

関連リンク

機械・ロボット・航空機1のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン