[ オピニオン ]
(2016/8/18 05:00)
経済産業省が中国商務部を通じて、インターネット上の知的財産権侵害の取り締まりの連携を中国の国家工商行政管理総局に呼びかけている。購買スタイルの変化で電子商取引(EC)を通じた模倣品被害が増加する中、製造元を特定するなどの対策には中国当局との連携が欠かせない。尖閣諸島や南シナ海など両国間には難しい問題もあるが、それとは区別して対話を継続すべきだ。
経済産業省がまとめた「模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告」によると、模倣被害を受けた日本企業のうち6割以上がネット上での被害を訴えた。特に海外の通販サイトを通じた模倣品の販売取引が48・2%と最も多かった。
電子化された模倣品は、ECサイトを通じて即時に全世界に拡散してしまう。また企業間取引サイトでは商品の取扱単位が大きいため、試買による真贋(しんがん)判定が難しい場合が多い。警告の対応が遅れると、被害が深刻化する恐れもある。
同報告によると、ネット普及率が5割を超え、ユーザー数も7億人に迫る中国の国内でも模倣被害に手を焼いている。「アリババ」などEC産業が急成長する一方、多数の模倣品や海賊版が流通。取り締まりのための法整備が進んだものの、いまだに大手サイトでも模倣品を取り扱っている率が高い。
これを放置すればECや動画を扱う中国のサイトは信用を失墜し、「中国ブランドに傷が付く」(経産省関係者)。さらに中国で製造した模倣品が東南アジアや中東など第三国に流出する懸念も強まる。日本と足並みをそろえた対策は、中国にとってもメリットだ。
日中両国は2009年、政府間協議の場として「日中知的財産権ワーキング・グループ」を設けた。一時は関係悪化で途絶えたものの、昨年から北京で再開。今年6月に東京で開いた第5回会合で、ネット上の知財保護の協力強化を確認した。
適切な模倣品対策は東アジアだけでなく、世界の経済発展に寄与する。有意義な対話で成果を上げてもらいたい。
(2016/8/18 05:00)