[ オピニオン ]
(2016/10/4 05:00)
オートファジーの研究により、東京工業大学フロンティア研究機構の大隅良典栄誉教授(71歳)のノーベル生理学医学賞受賞が決まった。まずは大隅氏にお祝いを申し上げたい。これで日本人の受賞は3年連続。生理学医学賞の受賞は大村智氏に続いて2年連続となる。また文学賞を除いた日本人の単独受賞は、1949年の湯川秀樹氏(物理学賞)、87年の利根川進氏(生理学医学賞)以来、3人目という栄誉だ。
オートファジーは自食作用という機能。大隅氏は、飢餓状態の細胞が飢餓を乗り切るために自らの細胞の一部を分解し、栄養源とするオートファジー機能を世界で初めて確認し、さらにそのメカニズムや関連する遺伝子を次々と明らかにした。
大隅氏の研究対象は当初、酵母だったが、その後、オートファジーは植物から人まであらゆる動植物に共通する細胞の機能であることを突き止めた。
オートファジー研究は1990年代までは年数本の論文が発表される程度だったが、近年は年数千本に増えている。オートファジーの機能不全による神経変異性疾患、細胞内に異常たんぱく質が蓄積する疾患など人の病気との関係も報告されている。また、がん細胞のオートファジー機能を阻害することによる治験例もある。
近年は大隅氏門下の東京大学医学系研究科の水島昇教授が、オートファジーが異常たんぱく質を分解浄化することや受精時にも欠かせないことなど多数の研究成果を上げている。
大隅氏はかつてインタビューで「科学の道を志すのであれば、人がまだやっていないこと、そして自分が心底面白いと思えることをやってほしい。研究テーマが自分にとって魅力的で面白いものでさえあれば、たとえ一時期不遇であっても、苦しさは必ず乗り越えることができます」と語っている。
若手研究者はこの言葉のように自分の信じる研究に邁進(まいしん)してほしい。また多くの少年少女が科学研究に興味を持ち、「知の大競争時代」をリードする研究者に育つことを期待したい。
(2016/10/4 05:00)