[ オピニオン ]
(2016/11/10 05:00)
米国の新大統領に共和党のドナルド・トランプ氏の就任が決まった。トランプ氏は大統領選中、民主党候補のヒラリー・クリントン氏にリードを許してきたが最終盤で巻き返し、第45代の大統領の座を射止めた。
今年の大統領選は異常ずくめであった。トランプ氏は政治経験のない経済人であり、「ワシントン政治からの脱却」を訴えた。一方の民主党候補のヒラリー・クリントン氏は、ビル・クリントン元大統領夫人で上院議員、国務長官歴任と政治経験豊富、女性初の大統領を目指していた。両氏とも高齢で、クリントン氏は途中、その健康が危ぶまれたこともあった。
選挙戦での両氏の論争は政策を巡るものは少なく、互いを批判するものだった。世論調査では多くの人々が「今回の選挙にはうんざり」と答えていた。
トランプ氏は、富者と貧者間の大きな格差、世代間格差、都市と地方の格差など米国が深刻な格差社会に陥っていることを示し、移民制限を打ち出した。トランプ氏はそうした格差に悩む人々に「本音ベース」で語りかけ、「再び強力な米国」づくりへ、白人の労働者層を中心に根強い支持を得た。彼は米国の雇用を奪っているとして自由貿易に否定的な姿勢を示し、環太平洋連携協定(TPP)に関しては「ばかげた協定」とするなど、米国の対外政策を大きく変えることを示唆している。
安全保障に関しても日本、韓国、ドイツ、サウジアラビアへの米軍支援は援助国を利すだけ、と従来からの米国の外交政策を批判した。ただ米国が内向的になってはいるとはいえ、欧州など各国の右派勢力との連携の動きは見逃せない。
米国の大統領は強大な権限を持つものの、その行使を議会や裁判所が抑制する組織的な制度がある。トランプ氏が来年1月20日の大統領就任式後、選挙中のような放言を繰り返すとは考えにくい。我が国はトランプ政権の布陣を見ながら日米関係の距離感を見定める必要がある。またトランプ氏当選に伴う円高、株安など不安定要因に、素早い対応をせざるを得まい。
(2016/11/10 05:00)
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