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(2016/11/10 05:00)
米大統領選は8日(現地時間)、投開票が行われ、共和党のドナルド・トランプ氏(70)が民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(69)を破り、勝利した。「不動産王」の異名を取り政治経験がないトランプ氏は反エスタブリッシュメント(支配階層)的存在として支持を集めてきたが、日本の政財界とのパイプはほとんどない。世界経済の停滞につながる保護主義や反グローバリズムの動きが強まることへの警戒感は強く、政治、経済両面で調和のとれた現実的な対応が期待される。
■現実的な政策期待
トランプ氏が大統領選を制したことに日本の経済界は衝撃を受けている。同氏が激戦州のフロリダ州を制したことが伝わった瞬間、「大変なことになるかもしれない」(大手メーカー首脳)と張り詰めた空気が漂い始め、東京株式市場が一時、1000円超の大幅下落となると「トランプリスクが現実となった」と緊張が走った。
「世界経済に与えるマグニチュードはケタ違い」―。経済同友会の小林喜光代表幹事はこう語る。「トランプ氏が選挙戦で訴えた主張を実行に移す前提に立てば為替や株価へのインパクトは大きい」と警戒する。
日本が成長戦略と位置付ける環太平洋連携協定(TPP)の発効は不透明になり、通商政策の練り直しを迫られる可能性もある。トランプ氏は「最悪の協定」と批判し、大統領に就任すれば直ちに離脱に取り組むと訴えているからだ。経団連の榊原定征会長は「TPPは米国にとっても重要であると理解してもらえると期待しており(その意義を)経済界も発信していく」と米国の現実的な判断に望みをつなぐ。その経団連は11月下旬、米ワシントンにミッションを派遣することを明らかにした。2017年1月の新政権の発足前に経済、外交政策について政府関係者から情報収集する狙いだ。
為替政策でもトランプ氏の持論は「日本は為替を操作して日本車を大量に米国に輸出している」。日本企業の収益を圧迫する円高基調が続くことも懸念される。
【略歴】ドナルド・トランプ氏 1946年6月14日、米ニューヨーク生まれ。68年ペンシルベニア大ウォートン校卒。父から継いだ不動産開発会社の経営者として全米でホテルやカジノを展開。不動産王の異名を取った。04年に始まったテレビ番組『アプレンティス(見習い)』の司会者を務めた。(ワシントン=時事)
(2016/11/10 05:00)