[ オピニオン ]
(2017/5/19 05:00)
好景気の実感は乏しい。政府は新たな成長戦略で企業の収益力を高め、内需拡大を確実なものにしてもらいたい。
内閣府が18日に発表した2017年1―3月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算2・2%のプラスとなり、大方の民間予測を上回った。5四半期連続成長は11年ぶりで、緩やかな景気回復が続いているという政府の景気判断を裏付ける結果となった。
内需、外需とも成長に寄与したが、特に内需の寄与度が大きく、1―3月期に限れば個人消費の伸びが全体を引っ張った。企業の設備投資も前期に続きプラスとなったが、現段階では推計値であり、6月8日発表の2次速報を待つ必要がある。
内需主導の自律成長は日本経済にとって望ましい姿だ。ただ1次速報の経済成長を実感している経営者は少ないのではないか。産業界が安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に協力し、実質賃金の増に努力してきたことは事実だが、それが力強い個人消費に結びついているようにはみえない。昨年末の野菜の高騰が年を越してから一服した反動増など短期的要因も考えなければならない。
一方で1次速報で名目GDPがマイナスに転じ、GDPデフレーターが大きく悪化したことも気にかかる。4月以降に相次いだ食品などの値上げが悪影響を及ぼせば、実質の個人消費は失速しかねない。
今後については、やはり企業が収益を上げ、内需拡大に貢献することが重要となる。中国経済が一時の混迷を脱し、着実に伸びていることがアジアの各国の景気に好影響を与え、足元の日本の外需を支えている。ただ、こうした環境は米中関係などの政治要因で容易に変わるだろう。北朝鮮問題による東アジアの緊張の高まりや、米トランプ政権による保護主義的な施策もマイナス要因だ。
日本としては今の経済的な安定を利用しつつ、デフレ脱却への努力を加速して本格的な自律成長を目指す必要がある。そのためにも、政府が策定する新たな成長戦略に期待する。
(2017/5/19 05:00)