[ オピニオン ]
(2017/9/18 05:00)
江戸時代の参勤交代とは逆に、大都市の企業社員が期間限定・交代で地方で働く「逆参勤交代」構想が提唱されている。働き方改革と地方創生を同時にかなえる試みとして、実現に向けた取り組みに期待したい。
都市と地方を行き来する“逆参勤交代”の発想は、解剖学者の養老孟司氏をはじめ、これまでにさまざまな人が提案してきた。三菱総合研究所の松田智生主席研究員は、それを理論付け、官民連携で導入するよう呼び掛けている。
江戸時代の参勤交代は多くの人が移動し、藩邸や宿場町、街道が整備された。逆参勤交代は地方でオフィスや住宅、ITインフラ需要、移動交通、生活にかかる消費などを創造する。
都市から地方に移動する社員は、週に数日は会社の仕事、数日は地域のために働く。得意分野を生かして特産品の販路開拓や観光客の誘致、地元の生徒の教育などに携われば、地方の担い手不足の解消に貢献できる。
仮に首都圏と近畿圏の大企業従業員約1000万人の1割に当たる100万人が年1カ月交代で地方で働くと、約8万3000人の移住に相当する。その結果、約1000億円の消費が地方に生まれるという。
企業や社員にもメリットは大きい。プロジェクトチームの集中合宿、将来の経営幹部の武者修行、社員のリフレッシュなどに活用。社員の意欲向上や健康増進、生産性や業績向上が見込める。地方で有望なニッチトップ企業やベンチャー企業を発掘し、地元の企業や大学との新事業創出も期待できる。
一方で実施に向けた課題があることも事実だ。経営トップの理解はもちろん、人事制度との整合、適切な地域の選定、移動交通費の負担、費用対効果の検証などだ。松田主席研究員は「移動交通費の割引や、導入企業に対する減税などのインセンティブが必要」と話す。
こうした課題を洗い出し、解決方法を示すため、三菱総研は企業や自治体とともに2018年度以降にモデル事業を開始する計画だ。さまざまな効果の検証結果に注目したい。
(2017/9/18 05:00)
総合3のニュース一覧
- ニュース拡大鏡/JAL再上場5年、“攻め”の準備整う(17/09/18)
- 大和ハウス工業社長に芳井敬一氏 (17/09/18)
- シャープ、8Kテレビ手頃に 普及に見通し(17/09/18)
- 社説/“逆参勤交代”−働き方改革・地方創生の効果検証を(17/09/18)
- スズキ、HV用リチウムイオン電池 印グジャラートで生産(17/09/18)
- ものづくり創造拠点オープン 愛知・豊田市(17/09/18)
- 三菱アルミ、北米で車熱交換器用板材の生産検討(17/09/18)
- 三重銀・第三銀統合で最終合意 三十三FG設立(17/09/18)
- 東芝、米社から特許侵害で損害賠償訴訟(17/09/18)
- 日立、情報セキュリティー体制を強化(17/09/18)
- 長谷川香料、社長に海野隆雄氏(17/09/18)