[ オピニオン ]
(2017/12/18 05:00)
誠実ではあっても、規模の小さな小手先の改正に終わった印象がぬぐえない。
政府・与党の2018年度税制改正大綱の最大のテーマは、個人所得課税の控除などの見直しだった。企業税制では、デフレ脱却と経済再生の目標に沿った手直しを盛り込んだ。
中小企業の事業承継税制が拡充され、要件が緩和されたことは評価したい。後継者が見当たらずに第三者に事業売却するようなケースでも税負担が分かりやすくなるなど、現実に即した制度と言えよう。
一方、大企業向けとしては、賃上げと投資を後押しする税制を整備した。賃上げや設備投資に積極的な企業は、最大20%の税額控除を受けられる。またデータ連係・高度利活用の投資にも税額控除を導入した。
これによって企業の生産性向上と、実質賃金の増を実現したいという政府の意欲がにじむ。ただ現実には要件規定が複雑で、中堅以下の企業には利用しづらい。本来なら、もっと簡素な税制が望ましいだろう。税制当局は同制度導入後の法人税収の変化をトントンと予想しており、決して積極的な減税策とはいえないようだ。
今回の税制大綱の目玉であった個人所得課税の見直しは、中堅以下のサラリーマンには影響が及ばず、零細な個人事業者は負担減となる。高所得者の基礎控除廃止という決断は税制の歴史的にも画期的だが、対象を所得2500万円以上と極めて限られた層に絞り込んだことで影響は限定的になった。
こうした所得税と法人課税の改正以上に税収に影響するのは、たばこ税の引き上げ(国・地方合計で2500億円)、海外への出国時の国際観光課税の新設(400億円)である。こうした細かな改正で税収を稼ぐのが今回の税制大綱の姿だ。
法人実効税率の引き下げなど、過去の大きな改革が一段落したせいもあろうが、これでは経済再生を後押しする税制として力不足と言わざるを得ない。来年以降は、企業がもっとヤル気を出せるような踏み込んだ議論を期待する。
(2017/12/18 05:00)