[ オピニオン ]
(2018/3/5 05:00)
PFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業に対して、地方銀行が高い関心を寄せている。マイナス金利の影響で疲弊する地銀にとって、PFIは低リスクな融資案件として魅力的だ。地元企業に密着し、豊富なネットワークを持つ地銀ならではの強みを生かし、地域経済活性化に汗を流してほしい。
PFIは公共インフラ事業の民間開放によって自治体の財政負担を軽減する一方、新たな事業機会の創出など地域経済の活性化につながると期待される。地銀にとってPFIの事業支援は、地域貢献とともに、新たな収益源の確保につながるビジネスチャンスでもある。
2002年に三重県桑名市と鹿島による全国初の図書館PFIを手がけた百五銀行は、同行が出資する百五総合研究所と合わせて11人を配置し、支援体制を整えた。これまでに地銀トップクラスである44件の融資実績を持ち、伊藤歳恭頭取は「それらのノウハウをベースに推進する」と案件の掘り起こしに意欲を見せる。
PFIの実施件数は全国で609件(2017年3月時点)に達した。実施案件の多くは給食センター、葬儀場など比較的、小規模な案件だ。上下水道、道路、空港などの大型案件は、愛知県で県内の8有料道路が民営化した例などがあるとはいえ、導入事例はまだ少ない。
事業機会の創出といわれながらも、ノウハウ、人材の不足を理由にPFI参画に踏み切れない地元企業は多い。このため、地銀の多くで自治体などとPFI推進組織を発足し、情報共有化を図り、案件の掘り起こしにつなげる動きが進んでいる。
ただこれまで地域によっては、経営が破たんしたといった失敗例も散見される。原因は複合的とはいえ、失敗例の多くは採算の見通しの甘さが指摘されている。
自らも案件形成能力に磨きをかけると同時に、地銀には地元密着の強みを生かし、地域のニーズを反映した案件の実現に力を発揮してほしい。「笛吹けど踊らぬ」という事態を招くことのないようにしたい。
(2018/3/5 05:00)