[ オピニオン ]
(2018/3/9 05:00)
東日本大震災から11日で7年―。時間の経過とともに被災地の実情は多様化している。政府には地域や事業者のニーズを見極めた、きめ細かい支援のあり方が問われている。
被災地でのインフラ整備は着実に進展した。一方で、東京電力福島第一原子力発電所事故後の除染、汚染水対策は長期にわたり、東北の農水産品に対する風評被害はいまだ払拭(ふっしょく)されていない。福島では今なお、5万人を超える人が地元を離れることを余儀なくされている。
仙台に本社を構えるアイリスオーヤマの大山健太郎社長は、地域経済を支える人材育成の重要性を訴え続けてきた。5年前から取り組む起業家育成では、卒業生同士の事業連携が広がるといった手応えを感じる一方で、水産業や販路開拓面で苦戦を強いられていると明かす。
状況は刻々と変化している。日本商工会議所は国の事業復興型雇用創出事業について、被災3県以外からの求職者の雇い入れや、すでに助成金を受給している事業者も対象に加える措置を求めている。被災3県沿岸部の有効求人倍率が震災前の3倍を超えるなど深刻な人手不足から事業の維持、拡大が厳しいためだ。
自立的な事業運営には資金ニーズの変化への対応も必要だ。被災企業の事業再開に効果を発揮した「グループ補助金」で、計画変更や設備の転用に柔軟に対応してほしいとの声がある。
政府の「復興・再生期間」は残り3年となった。問われるのは、自立へ向けた萌芽(ほうが)を育む視点と、長期化が避けられない課題解決の道筋を示し続けることである。東北産品の輸入規制の早期撤廃を諸外国に働きかけることや福島の産業復興は、国の関与なくして実現しない。
東北は少子高齢化や都市部への人口流出など、多くの地域が直面する構造的な問題が速いスピードで顕在化している。裏返せば東北の「いま」は日本の未来を映す鏡。だからこそ、震災を東北固有の課題として捉えるのではなく、日本の成長モデルを描く上でも復興の歩みを確固たるものにしたい。
(2018/3/9 05:00)