[ オピニオン ]
(2018/6/12 05:00)
8日に閣議決定した「2017年度エネルギー白書」は、政策の踏み込み不足が目立った。近く閣議決定する第5次エネルギー基本計画を見据え、30年のエネルギーミックス(電源構成)や50年を視野に入れたシナリオなど中長期的なわが国のエネルギー政策の課題を指摘するにとどまった。再生可能エネルギーの普及に向けた道筋など未来像は見えてこない。
新たなエネルギー基本計画の素案では、30年時点での電源構成比率について、原子力発電が20―22%、再生可能エネルギーが22―24%、火力発電が56%とする従来目標を維持している。
白書では、再エネを30年時点で「主力電源化」することを盛り込んでおり、この点は評価できる。50年までの温室効果ガス80%削減の政府目標について、経産省としても真剣に取り組む意欲の表れともとれる。ただ、問題はこれからだ。電力需要のうち、再生エネがまかなっているのは、約15%。単純比較はもちろんできないが、海外では30―40%を担っている国も増えている。「主力電源化」とうたっておきながら、30年時点での比率は変えていない。
将来の再エネ拡大に向けた道筋も示されていない。コスト低減が最大の課題の一つ。太陽光の発電コストはドイツが1キロワット時当たり9円なのに対し、日本は24円、風力は10円に対し21円となっており、2倍と高い。日本は再エネの固定価格買い取り制度(FIT)を導入し、コストは電力料金に上乗せされる仕組みだ。FITの抜本的見直しは不可欠だ。
また、電力系統の制約も大きな課題だ。再生エネが大量に導入されると、送配電網の容量も超えて、停電のリスクが高まるためだ。送配電網のすきまを利用する「日本版コネクト&マネージ」の導入なども必要だ。
一方、原子力発電についても踏み込み不足だ。寿命を迎える原発の建て替えや新増設の是非などは盛り込まず、先送りされた。エネルギー源多様化と徹底した省エネなどあらゆる政策を駆使してエネルギーをまかなう取り組みが求められる。
(2018/6/12 05:00)