[ オピニオン ]
(2018/7/23 05:00)
日本の総人口(社会増減を含む)は7年連続で減少している。1990年代前半に70%近くに達した生産年齢人口(15―64歳)も60%前後に低下、今後も減少していく。つまり企業にとっては働き手が減ることになり、特に中小製造業にとっては深刻な問題となるだろう。
製造業はどんなに自動化を進めても、ある程度の作業者は必要だ。そのための対策としては生産年齢を超えた65歳以上も含めた高齢者や女性作業者の割合を増やす、外国人労働者を雇用するなどが考えられる。
だが、高齢者の場合は技術・技能の伝承の難しさ、病気など身体機能の変化による生産への影響が考えられる。病気のリスクは高齢になるほど高まり、入院治療も増えてくる。厚生労働省の患者調査によると、年齢別の入院患者数は5歳以降、年齢が増えるにつれて患者数が増加し、60代は20代の約3・2倍、平均在院日数は20代の約2・5倍長くなるという。
入院すると、その人の仕事を誰かが代替しなければならなくなる。入院した人が熟練者だった場合、代替者が習熟するまでは生産性が低下することが考えられる。女性の場合も出産のための産休があるが、予測ができるので、病気入院と違って代替者の教育ができる点が異なる。
東京理科大学の日比野浩典准教授らは作業者の病気リスクを考慮し、生産性への影響を評価可能な生産システムシミュレーションを開発した。生産ラインを構成する年齢や習熟度、代替作業者の年齢と習熟度などで15通りのシミュレーションを実施した。その結果、稼働率は代替者の習熟度が未熟の場合、最大約1%下がるという結果だった。同准教授らのこの研究成果は機械学会優秀講演論文表彰を受賞した。
これは比較的習熟しやすい部品組み付けラインが対象のシミュレーションで、業態が変われば習熟関数も変わるので、影響が大きくなることが予想される。高齢化社会で意欲ある高齢者の活用は必要だが、病気などのリスクに備えておくこともまた必要なことを示唆している。
(2018/7/23 05:00)