[ オピニオン ]
(2018/10/31 05:00)
日韓関係への打撃は避けられない。日本企業の事業展開への影響を最小化するよう両国政府の行動を求める。
韓国の最高裁判所は、太平洋戦争中に強制労働させられたとして元徴用工の韓国人4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟で、新日鉄住金側の上告を棄却した。これにより、同社に賠償の支払いを命じた二審判決が確定した。
日本政府はもちろん、韓国政府もこれまで、1965年(昭40)の日韓請求権協定によって個人の賠償権は「完全かつ最終的に解決済み」との立場をとってきた。これに対し、韓国の司法は「個人請求権は消滅していない」として、国家間の正式な合意をほごにする最終的な判断を示した。
判決は明らかに国際法と国際常識に反するものであり、韓国の司法が国民情緒に流されて不合理な判断をしたと言わざるを得ない。歴史を巻き戻し、日本の戦後処理そのものを無効化するような判断は断じて許容できない。日本政府が「到底受け入れられない」と強く反発したのは当然だ。
産業界として懸念されるのは他の日本企業への波及である。新日鉄住金以外の訴訟はもちろん、類似の訴訟が相次ぐ恐れは大きい。万一、他のアジア諸国で同じ動きが出るようなことになれば、日本企業の事業展開に支障を来す。
富と繁栄を生む経済活動は、平和と安定という基盤がなければ成り立たない。韓国の判決は、同国と取引関係のあるすべての企業が予見できない不合理な不利益を受ける懸念があることを内外に示した。誰よりも困惑しているのは韓国の産業界であろう。韓国政府が、従来通りに「個人への賠償責任は政府にある」との立場で適切な対処に乗り出すことが必要だ。
日韓関係は経済面にとどまらず、多方面で冷却することになろう。しかし、一衣帯水の両国の企業が全くつながりを絶つことなど不可能だ。経済活動が両国をつなぐ絆であり続けるためにも、関係企業が脅威にさらされないよう配慮してほしい。
(2018/10/31 05:00)