[ オピニオン ]
(2019/5/1 05:00)
「平成」が終わりをつげ、新しい「令和」が1日幕を開けた。近年のデジタル革命の急速な発展について行けずに、日本は立ち往生している。新時代に必要なのは産学によるイノベーション創出サイクルの構築だ。そのためには、政府、民間企業、大学が一体となった知的財産戦略の見直しが欠かせない。
日本はバブル崩壊後に長期景気低迷が続き、多くの日本企業が攻めの経営に転換できなかった。企業の内部留保合計は約446兆円(財務省の2017年度の法人企業統計)に達する。
こうした姿勢が、国際的な技術革新の波への遅れをとった。象徴的なのが、通信革命と言われる「5G」。この分野では、すでに韓国と米国が相次いでサービスの一部をスタートさせた。一方、日本は周波数の割り当てをようやく決めたばかり。政府の対応の遅れが競争力の足かせになっている側面もある。
この状況を打破するには、イノベーション創出のための大きな環境づくりだ。米国では、応用研究も多く、大学発ベンチャーを輩出し、ベンチャーキャピタル(VC)も多額の投資をする。投資競争は激しく、VCは少しでも有利なポジションを占めようと、上流側の基礎研究にも投資対象を広げる。各科学領域の目利きを独自に高年俸で雇用し、虎視眈々(こしたんたん)とより上流側の有望なシーズを狙う。
また、注目すべきは米国の大学の存在意義が「社会への還元」であることだ。このため、企業との協力という観点が重視され、同時に研究者の評価の重要基準となる。その結果、研究の方向が必然的に社会に向かい、外部資金が入ってくる。
イノベーション競争を勝ち抜くには、特許などの知的財産戦略を駆使する必要がある。政府は、大学や企業などに知財を使うことで成果重視や競争原理を働かせるような環境をつくることだ。大学は社会の発展につながる知財を創出する。また、企業やVCは、目利きの人材を獲得するか育成しながら、積極的に投資していく。知財を中核とするサイクルを廻していくことが日本再生の近道だ。
(2019/5/1 05:00)