[ オピニオン ]
(2019/8/9 05:00)
化石燃料の燃焼により発生する二酸化炭素などが地球温暖化を促進している。エネルギー資源の乏しい日本こそが化石燃料に依存せず再生可能エネルギーの普及に努めなければならない。ただし天候に左右される再エネをさらに大量導入するには電力系統の強化が必要になる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は35億円以上を投じて再エネの主力電源化に向けた次世代電力ネットワークの安定化技術開発に着手した。電力会社や大学、研究機関などに委託し、慣性力低下に対応するための基盤技術や配電系統における電力潮流の最適制御方式、電圧フリッカー対策の3テーマを3年程かけ開発する。
慣性力は水力や火力などが電気の周波数に合わせて回転すること。慣性力があると系統事故などの瞬間的な変動を緩和できるが、太陽光や風力は慣性力がないので、再エネが50%程度導入されると、大停電を防ぐためにこの対策が必要になる。
具体的には、詳細な時刻同時データが計測可能な位相計測装置(PMU)による常時監視システムの開発や、インバーターに特殊なソフトウエアを入れて瞬時に慣性力があるのと同じ動作をする制御装置などを検討する。
配電系統の制御は現在、引き出し口のところの1点で測っているが、バーチャルパワープラントやアグリゲーターなどが入ってくると配電線データを緻密に取得・管理する必要が出てくる。
このため配電線のいろいろなところでデータを取得し最適制御する手法を開発する。もう一つはフリッカー障害(蛍光灯などのちらつき)への対策だ。
長期的には温室効果ガスを排出する火力発電や事故が起こると大災害になる原子力発電への依存度をできる限り減らし、再エネに切り替えていきたい。
使用する電気をすべて再エネで賄う「RE100」加盟の日本企業は7月時点で19社になった。再エネのニーズはどんどん高まっている。NEDOの事業が順調に進むことを期待したい。
(2019/8/9 05:00)