社説/公益法人のガバナンス 積極的に「増進」に取り組め

(2019/10/31 05:00)

公共の福祉に奉仕することにとどまらず、もっと公益の増進に前向きであってほしい。

公益法人協会(東京都文京区)が新制度10周年を機に「公益法人ガバナンス・コード」を策定した。英国の「チャリティー・ガバナンス・コード」に範をとり、公益社団・公益財団の運営の原則を定めたものだ。

内容を見ると、誠実性・社会への理解促進や理事会の有効な運営、コンプライアンスなど8項目を定めている。税制優遇などの優遇がある公益法人には高い倫理性が求められており、その基準として妥当なものと言えよう。しかし忘れてはならないのは、誠実であれば十分なのではないということだ。

明治以来、認可を受けた社団・財団は2万4000余。これが10年前にスタートした新制度によって「一般」と「公益」に2分された。国が公益性を認定し直したのである。新制度下の公益法人は1万弱に減った。

産業界でみると、経団連と業界団体の大多数は一般社団に転換。一方で企業が基本財産を拠出し、奨学金や美術館を運営するような社会貢献事業が公益法人を選択した。公益性が明確になったのはいいが、全体の人員や活動範囲は縮小した。

企業と無関係な公益法人では、国や自治体から助成を受けるスポーツ・文化団体が目立つ。基本財産の運用や助成金の配分に倫理性が求められるのは当然だ。しかし、そこにとどまっていては毎年、同じ事業を単純に繰り返すだけになってしまう恐れがある。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)からも分かるように、民間の知恵と善意を公益に生かすことへの期待は年を追うごとに大きくなっている。公益認定法で定める目的も「公益の増進」だ。ガバナンス・コードでは「使命と目的」の項で各法人に社会的責任を認識するよう求めているが、より明確に公益事業の拡大姿勢を打ち出しても良かったのではないか。

大手企業が資金拠出する財団は、公益活動の大きな部分を占める。寄付集めの工夫など「増進」を模索してもらいたい。

(2019/10/31 05:00)

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