社説/真庭の再エネコスト削減 ポストFIT時代の手本となれ

(2019/11/6 05:00)

岡山県真庭市で木質バイオマス発電のコスト削減に向けた取り組みが始まった。再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の対象期間終了に備え、FITに依存しない収益構造を目指す。ポストFIT時代における木質バイオマス発電の手本となってほしい。

木質バイオマス発電は、地域の森林資源などを燃料に利用するため環境中の二酸化炭素循環量に対して中立なうえ、安定電源で雇用創出につながるなど多様な可能性がある。近年は災害時のバックアップ電源としても期待が高まる。ただ再エネの中でも相対的にコストが高く、森林の保全や植栽、伐採、集荷、加工などで燃料費がかさみ、普及の妨げになっている。

真庭バイオマス発電が運営する発電所(発電能力1万キロワット)は、FITに基づき地域の新電力へ売電。燃料購入費だけで売電収入の約6割を占めるため、2035年のFIT終了に備え国の支援制度などを活用してコスト構造の改革に着手した。

具体的には、真庭市がクヌギやコナラなど未利用広葉樹の利用を目的に路網を整備する。広葉樹は伐採しても自然に再生することから植栽が要らないなど針葉樹にはない利点がある。また植栽から燃料化までの期間を短縮するため、外来種のコウヨウザンなど早生樹を植栽し、成長に適した環境や外来種の生態系への影響などを調査する。

さらに被災時のブラックアウトを防ぐため、真庭バイオマス発電が事業主体になり、木質バイオマス発電や太陽光発電などを活用して自立的な電力供給網を構築する検討も始めた。

政府の「エネルギー基本計画」は再エネを主力電源化し、30年度の電源構成比を22―24%(17年度は大型水力含め約16%)に高める。だが50年までに温室効果ガス排出量を80%削減する政府目標の達成に貢献するには、FITがなくても事業が成り立つ基盤をつくり、構成比でさらに高みを目指す必要がある。

真庭の挑戦が再エネを加速し、福島原発事故以降、迷走を続けるエネルギー政策に一筋の光明となることを期待したい。

(2019/11/6 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい空気圧の本

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

技術士第一次試験「機械部門」専門科目過去問題 解答と解説 第9版

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣

電験三種 合格への厳選100問 第3版

電験三種 合格への厳選100問 第3版

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン