社説/企業業績の格差顕著に 問われる変化に適応する力

(2020/8/10 05:00)

大企業の企業業績の優勝劣敗があらわになっている。年初に新型コロナ感染症を想定した企業は皆無だろうが、変化に適応できる力を持つ企業の底強さが顕著になっている。

2020年4―6月期連結決算が相次いで発表され、コロナ禍が企業業績悪化を招いている状況が明らかになった。リーマン・ショック時に匹敵する落ち込みへの覚悟も必要だろう。

航空、運輸、ホテルなどは、出入国の禁止措置や移動の自粛による打撃が大きく、JR東日本が過去最大の当期赤字を計上するなど、深刻な影響が出ている。製造業も世界の消費活動停滞の影響は大きく、三菱自動車は過去最大の当期赤字を計上した。

ただ、個々の企業を見ると、同じ業種でも結果に違いが見られる。製造業の中でも悪影響が大きい自動車業界では、乗用車7社のうち日産自動車、ホンダなど5社が当期赤字に沈むなか、トヨタ自動車は1588億円の当期利益を確保した。中国販売が前年同期を上回ったことや経費節減効果が寄与した。

ファナックも同年4―9月期の連結業績予想を上方修正した。中国向け受注好調に加え、国内や欧米での自動化需要回復を見込んでいる。

巣ごもり消費拡大のなかで、ゲーム業界は増収増益を確保する企業が多いが、中でも任天堂の好調が際立つ。人気コンテンツのオンライン市場での世界販売が急増しているためだ。

小売りの不振が続くなか、セブン&アイ・ホールディングスが、米スピードウェイの買収を決めた。買収額は2・2兆円に上る。国内の成長が頭打ちになるなか、海外に活路を求める戦略だ。リスクも伴うだけに株式市場は懐疑的だが、投資に踏み切る姿勢を評価したい。

自社製品に磨きを掛け、世界市場で展開する準備をし、デジタル化対応がとれていた企業が、結果としてコロナ禍で堅実な業績を見せている。内部留保を確保しているのも強みだ。感染が収束し、世界経済が本格回復すれば、企業間格差はさらに広がるかもしれない。

(2020/8/10 05:00)

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