社説/ドコモを完全子会社化 世界で勝てる体制構築が急務だ

(2020/9/30 05:00)

「GAFA」に支配されつつある国内市場を取り戻し、世界へ反転攻勢をかける。日本のICT(情報通信技術)産業の将来を左右する体制変更である。世界で戦うという視点で、あるべき姿を描いてもらいたい。

NTTは29日の取締役会で、66・2%の株式を保有するNTTドコモの完全子会社化を決議した。残り約34%の株式をTOB(株式公開買い付け)で取得する。取得額は4・2兆円。

澤田純NTT社長は将来像として、長距離・国際通信のNTTコミュニケーションズをドコモ傘下とする考えも表明した。規制で縛られたNTT東日本・西日本を除き、通信の主役となったモバイルと国際市場攻略を進めるための、事実上のグループ一体経営への布石である。

上場廃止となるドコモをグループの中核に据え、移動と固定通信の融合や、通信インフラからサービス領域までを一体で提供する体制を整える。経営の迅速化とグループ連携による効率化が狙いだ。

これまでなら、国内市場の競争を阻害し、独占を招くと批判されただろう。しかし、世界のICT市場は日本を大きく引き離し、劇的に変化している。アップルやグーグルなどのGAFAが台頭し、顧客基盤を着々と奪っている。第5世代通信(5G)時代になり、日本の劣勢はより顕著になった。

NTTやドコモの技術力はかつては世界有数だったが、今や華為技術(ファーウェイ)やクアルコムが先行しつつある。6G時代までに世界をリードする力をつけるには、組織再編にまで踏み込む必要があった。

筆頭株主である日本政府も、デジタル化への遅れに危機感を持ち容認した。競合するKDDIやソフトバンクにとっては大きな脅威であり、国内の通信市場は変化を迫られるだろう。

むろん体制変更の果実を得るのは、国民であるべきだ。安価で利便に優れたICTサービスを提供し、同時に関連産業の国際競争力も高める。NTTの生き残りではなく、国民にとって有益となる再編を実現してもらいたい。

(2020/9/30 05:00)

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