社説/中国を考える(下)台湾有事、米の「曖昧戦略」議論を

(2022/4/29 05:00)

 ロシアのウクライナ侵略は、中国による台湾統一の危機を想起させる。だが米国は直接的な軍事介入を避けているウクライナ以上に台湾を重視している。軍事介入の可能性が玉虫色のこれまでの「戦略的曖昧さ」で中国をけん制できるのか、不測の事態への備えを急ぎたい。

 台湾は世界の先端半導体の9割を生産し、中国の対米防衛線「第1列島線」に位置する戦略的な重要地域でもある。

 先進7カ国(G7)など西側諸国は、台湾有事は中国を利することにならないと繰り返し訴えていくことも必要だろう。

 中国は外貨準備高の3割に当たる約1兆ドルを米国債で保有する。ロシアのように米欧が資産凍結すれば中国経済は打撃を受ける。中国は独自の国際銀行間決済システム(CIPS)を稼働しているが、国際銀行間通信協会(SWIFT)での決済よりケタ違いに少ない。

 ただロシアへの経済制裁で新興国・途上国が一枚岩でなかったように、対中経済制裁でもイデオロギーとは別に「中立」を貫く国も少なからず存在する。西側諸国が中国への経済制裁を決めても、攻めあぐむ可能性がある。経済制裁の「抜け道」を勘案すると中国経済への影響は限定的とみられ、米国は「戦略的曖昧さ」をめぐる議論を本格化する必要がある。

 台湾による長距離ミサイルの配備や徴兵制復活の検討など、台湾の自衛力強化も有事の抑止力の一つになる。ロシアが陸続きのウクライナ侵攻で苦労したのに対し、中国と台湾は海で隔てられ、中国軍の渡海・上陸は容易ではない。ウクライナ以上に侵攻が難しい体制をさらに強化することも肝要だろう。

 国内総生産(GDP)世界2位の中国は、ロシアと比較にならないほど世界経済と広く溶け合い、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)も主導する。米国を脅かす経済大国に発展した中国が、自ら西側諸国との距離を広げ、成長を停止する道を選ばないと期待したい。

 米国には、気候変動問題などを切り口に、中国との協調を模索する外交努力も求めたい。

(2022/4/29 05:00)

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