(2024/12/26 05:00)
日本製鉄によるUSスチール買収の行方は、バイデン米大統領に委ねられた。バイデン氏は大統領選で、買収に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)に配慮し、買収に否定的な姿勢を示してきた。労組票の獲得を競うトランプ氏と歩調を合わせたもので、民間企業が政争の具とされたのは残念だ。大統領選は終わった。バイデン氏はトランプ氏の自国第一とは一線を画し、公正な判断を下してほしい。
バイデン氏が買収計画を承認しても、2025年1月には、「(買収計画を)即座に阻止する」と明言するトランプ氏が大統領に就く。買収阻止は、世界の粗鋼生産で5割以上のシェアを握る中国を利するだけだと、トランプ氏に説く必要がある。
日本製鉄は24日、対米外国投資委員会(CFIUS)が買収の是非をバイデン大統領に一任したとの報告を受けたと発表した。石破茂首相はバイデン氏に計画承認を求める書簡を送っており、これが看過されるか注視したい。これまでCFIUSによる審査は主に中国抑止が狙いで、同盟国の企業への“攻撃”となれば異例の事態だ。計画阻止には合理的な根拠などない。
買収阻止なら、USスチールは製鉄所閉鎖や本社移転などが視野に入る。独占禁止法上、米国の同業との統合も難しい。日鉄はUSスチールの雇用も生産も守り、買収後には取締役の過半を米国籍にするとも発表している。買収阻止が米国経済にマイナスなのは明らかである。
米国内にも買収実現を求める声が少なくない。USスチールの生産拠点などがあるペンシルベニア州とインディアナ州の市長らは23日付で、買収を求める書簡をバイデン氏に送った。地元の雇用を守るためだ。9月には経団連と全米商工会議所などが連名でCFIUSに書簡を送り、買収計画への政治的な圧力に強い懸念を表明している。
日鉄の高度な生産技術とUSスチールが持つ最先端の電炉技術を融合し、脱炭素を加速することは米国の国益にもかなう。米国内での生産強化は経済安全保障にも資するはずだ。バイデン氏の公正な判断に期待する。
(2024/12/26 05:00)
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