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[ 科学技術・大学 ]
(2017/3/14 05:00)
東京大学大学院総合文化研究科の佐藤洋平大学院生、上野和紀准教授らは、東京工業大学フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授らと共同で、“ポスト・グラフェン”として注目の厚さ原子数層の黒リンを使った高性能トランジスタを開発した。黒リンは炭素物質のグラフェンよりバンドギャップ(電子が存在しない領域)が大きく、トランジスタの材料として有望。グラフェンと同様の層状構造を持つ黒リンを使った新規デバイスの実現が見込める。
共同研究チームは、酸化されやすい黒リンの表面を、電気化学的なエッチングによって薄く加工し、空気にさらさずに膜厚を制御することに成功した。これによって、良好な動作特性を持つトラジスタを作製できた。
試作したトランジスタのスイッチング動作に必要なバンドギャップは1・5電子ボルトと、従来の厚膜の黒リントランジスタに比べて約7倍に向上した。これは単原子層の性能に相当する。トランジスタの性能指標である移動度を低下させず、バンドギャップを大きくできたことで、高性能トランジスタが実現した。
黒リンを数原子層の厚さに薄くし、膜厚を制御すると、バンドギャップが変化することは知られている。しかし、黒リンは空気中の水分と反応すると、移動度などが劣化してしまう課題があり、これまで動作性能の高い単原子層トランジスタは報告されていない。
リンはマッチや肥料に使われる物質で、リンの同素体の中でも黒リンは比較的安定な半導体材料。グラフェンをはじめとする厚さ数原子層の層状半導体は高い移動度を持つことから、高性能なトランジスタとしての応用が期待されている。
14日からパシフィコ横浜(横浜市西区)で開かれる応用物理学会春季学術講演会で発表する。
(2017/3/14 05:00)
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