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(2017/4/6 05:00)
三菱電機のFAシステム事業本部が、IoT(モノのインターネット)関連の取り組みを強化している。年内に第三者企業がアプリケーション(応用ソフトウエア)を開発できる工場用IT活用基盤を構築する方針。アプリ開発などのオープン化により工場自動化(FA)機器とITの連携を促し、IoT対応の次世代工場を実現することが狙いだ。これまで囲い込み戦略を採っていた同社の方針転換は、モノづくりの激変を象徴している。
「多種多様な業種や工程に対応するには、豊富なアプリが必要だ」―。漆間啓常務執行役は、オープン化の理由をこう説明する。同社は4月以降、新たな基盤に対応したソフト開発キット(SDK)や応用プログラムインターフェース(API)などを公開する予定。これにより、ソフト開発企業が生産データの収集、分析などに使われるアプリを新基盤向けに製品化できるようになる。
オープン化はアプリの開発だけにとどまらない。三菱電機のFA機器のみならず、他社製の機器のデータも収集可能にするからだ。このため、メーカーごとの差異をドライバーソフトで吸収し、標準的に稼働情報を管理できる手法を確立する。
同社にとってこのオープン化は、大きな転換点となる。以前から提唱してきた「e―ファクトリー」は、自社の制御機器、ロボットなどと提携先のIT製品を一括提供し、課題解決に導く仕組み。あくまで自社のFA機器がベースにあり、他社の機器との連携には積極的ではなかった。
戦略変更の理由は、IoT化に伴う事業環境の急変だ。工場内のあらゆる機器、また工場同士をもネットワークでつなぐことを、ユーザー企業が構想し始めた。従来のe―ファクトリーではカバーできない領域まで対応しなければ、選ばれない時代が近づいている。競合のファナックも、工場用のIoT基盤を打ち出した。三菱電機の方針転換により、FA業界の変化が加速しそうだ。(藤崎竜介)
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インターネットにより資本財から消費財に至るまで相互につながり制御し合うIoTが、企業、社会を変えようとしています。本連載ではIoTのサービス提供、利用実態の両面を取り上げます。
(2017/4/6 05:00)