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[ 科学技術・大学 ]
(2017/8/7 05:00)
東京大学生産技術研究所の野村政宏准教授らは、周期的なナノ構造を使い、熱の波動性によって熱伝導を制御可能なことを実証した。光の波動性を利用して光学技術が発展したように、熱の波動性を利用した「フォノンエンジニアリング」により、熱伝導を制御する新たな技術の発展を見込む。米科学誌サイエンス・アドバンス電子版に掲載された。
研究グループは、光を使って非接触で熱伝導を計測する高速の測定システムを開発。シリコン薄膜に周期的に孔をあけたナノメートル寸法(ナノは10億分の1)の人工結晶「フォノニック結晶」と、その周期性をわざと乱した構造の熱伝導を比較した。
その結果、周期性を少し乱すだけで、熱伝導が変化することを初めて突き止めた。これにより熱の波動性を利用し、熱伝導を制御できることが分かった。
今回の実証実験は低温下で行ったが、より微細な構造を用いれば、室温でも効果が見込め、実用的な熱伝導制御技術として使える可能性がある。
従来、熱伝導は「フォノン」と呼ぶ熱を運ぶ粒子の移動で説明されてきた。しかし、熱本来の姿は原子などの振動であり、波動性を持つため、可干渉性を保つ周期的な構造中では干渉を起こし、熱伝導が変化する可能性が指摘されていた。
だが、従来の電気的な測定法では、一度に測定できる数に限りがあり、系統的で誤差の小さい実験が難しく実証できていなかった。
(2017/8/7 05:00)