[ オピニオン ]
(2017/8/17 05:00)
資源エネルギー庁が高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する「科学的特性マップ」を公表した。かつて最終処分を受け入れる自治体を募ったところ、2007年に高知県東洋町が応募を表明したものの、住民の反対で取り下げたという経緯がある。その後、手を挙げる自治体はなく、今度は国が適地を提示し、複数地域に処分地選定調査を受け入れてもらうことを目指す。
原子力発電に賛成・反対にかかわらず、今までに原発から排出された高レベル放射性廃棄物は何らかの形で処分しなければならないことは言うまでもない。「トイレなきマンション」といわれながらも、原発を稼働し続けてきたために、核のごみは膨大な量になる。産業廃棄物の最終処分場でさえ、近隣住民の反対にあってなかなか造成できないことを考えると、適地探しは難航しそうだ。
科学的特性マップは使用済み核燃料を再処理した時に出る高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にして、地下300メートル以深に埋める地層処分が前提だ。このため、火山や活断層の近傍などの地域を除外。海上輸送を考慮し、沿岸部を中心に国土の3分の2が「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」としている。
高レベル放射性廃棄物を、元となったウラン鉱石と同程度の放射線量にまで減衰させるのに数万年もかかる。5万年前は現在のヒトの祖先であるホモ・サピエンスが地球上に登場した頃である。これから数万年先に地球がどうなっているか分からない。そういうものを地中深くに埋めて万が一のリスクを管理できるのだろうか。
日本学術会議は2012年に原子力委員会の依頼を受け、「高レベル放射性廃棄物の処分について」というテーマで議論し、「最終処分の形態として想定されている地層処分には、地層の変動やガラス固化体の劣化など、千年・万年単位にわたる不確定なリスクが存在するため、課題が多い。このリスクを避けるには、比較的長期にわたる暫定保管という処分法が有力な選択肢となると考えられる」と回答している。
暫定保管のメリットとして①一つのシナリオを固定せず、数十年ないし数百年後の再選択に対して開かれた方式②将来世代の選択可能性を保証③将来の技術進歩による対処の選択肢を広げる―などを挙げ、少なくとも現時点で、地層処分に踏み切るという現行の方針との間で、リスクの比較考量を行うに十分に値するとしている。
危険なものを処分するには、そのリスクの管理が不可欠だ。300メートル以深の地中に埋めてしまったら、リスク管理が機能しないのではないだろうか。仮に映像などで監視していても掘り返して取り出すのは容易ではない。学術会議の暫定保管には一考の余地があると思われる。
(山崎和雄)
(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)
(2017/8/17 05:00)