[ ICT ]
(2017/12/4 05:00)
富士通はFA制御の高度化や人工知能(AI)活用に取り組むスマート工場の省エネ対策として、発熱量が多いスーパーコンピューターの冷却で培った液浸技術を投入する。液浸技術はフル稼働時に過熱するCPU(中央演算処理装置)などを丸ごと液体槽に浸すことで、空冷に比べて約4割減の消費電力で冷却できる。塵や油分が飛散する製造現場や高温多湿下でも使用できる耐環境性も備えていることに着目し、頭脳集積型のスマート工場への適用で先駆ける。
液浸冷却技術は電気を通さない不活性液を冷媒として用い、液浸槽の中で直接冷やす。用途はスパコンなどコンピューター向けが本流で、米グリーンレボリューションや香港のアライドコントロール、台湾のギガバイトなどがそれぞれ独自方式で本番利用の先陣争いを展開中だ。
富士通の方式は市販のサーバーをそのまま液浸槽に入れるなど汎用性が高い。この特性を生かし、業界に先駆けて、コンピューター向けに加え、FA機器にも液浸冷却技術を転用する。
ロボット制御では可動部分の多いコントローラーが熱を帯びやすいことから、工場向けに数百―数千台規模で販売すること想定し、小型の液浸槽を試作。産業メーカーと実証実験の検討を始めた。
また液浸冷却を用いれば、油が飛散する生産ラインの近くやデッドスペース(利用しにくい空間)に高集積のAI専用機を持ち込むことも可能。これにより、設備から生じるデータを現場で適時処理する「エッジコンピューティング」などのニーズにも応えていく。
液浸冷却は米クレイが1985年にスパコン向けに実用化した。その後、LSIの製造技術が省電力のCMOSにシフトした結果、液浸の需要は減り、空冷が中心となった。しかし、2010年ころから、LSI設計の微細化の限界が見え始めるとともに、発熱問題が再燃。ここ数年では、クラスター型システムやAI専用機で高性能のCPUが大量に使われるようになり、FA分野でも頭脳集積型のスマート工場が台頭する中で、省エネや熱対策が深刻化している。
(2017/12/4 05:00)
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