[ オピニオン ]
(2018/2/13 05:00)
他業界に先駆けて、自動車業界で下請け取引条件の改善が進んでいる。ただ、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の対象外となる大企業間で手形取引が残り、下請けの末端まで現金取引化が浸透していない。引き続き改善に取り組んでほしい。
公正取引委員会と経済産業省・中小企業庁は、下請け取引について「できる限り現金払い」とし、手形で支払う場合も支払期日を60日以内に短縮することを強く求めている。これを受け、日本自動車工業会会員の完成車メーカー14社のうち8社が支払い条件をすべて現金に切り替えた。
14社は取引条件改善に向けた業界の自主行動計画を社内で共有する。日本自動車部品工業会(部工会)傘下の自動車部品メーカーも70%以上が情報を共有している。
だが中小企業庁の調査によると、1次・2次下請けが集まる部工会企業で、すべて現金払いを受けている企業は22%にとどまる。1次から4次下請けが参加する素形材関連業界では、すべて現金で受け取っている企業は14%にすぎない。
完成車メーカーが現金取引化したのにもかかわらず、改善が進まない理由は、1次下請けメーカーの大半が下請法の対象とならない大企業だからだ。完成車メーカーから現金を受け取れないから、支払いも現金化できない。「車メーカーがすべての取引を現金化しない限り、サプライチェーン全体の改善は進まない」と関係者は指摘する。
「下請Gメン」(取引調査員)によるヒアリングからも課題は見えてくる。とりわけ価格決定方法の適正化は道半ばだ。口頭での単価引き下げや、数%の原価低減要請に応じないと仕事が止まるなど、不適切な要求が散見されるという。政府は来年度から下請Gメンを倍増し、一層の実態把握に努める考えだ。
下請け企業が適正な利益を得て、生産性向上につながる設備投資や研究開発を進めることは、親事業者の競争力強化にも貢献するはずだ。双方が十分に意見を交わし、あしき商慣行が改善されることを望みたい。
(2018/2/13 05:00)