[ オピニオン ]

社説/18年版中小企業白書 ITなど成長投資に力を注げ

(2018/4/27 05:00)

2018年版中小企業白書は、生産性向上の取り組みに焦点を当てた。大企業との収益格差が広がる中、特にIoT(モノのインターネット)などITを活用することで効率化を図ることが重要だと論じた。実際に企業間のIT連携で共同受注などの成果が出ているという。中小企業は、収益の拡大に向けてIT投資に踏み切る必要がある。

景気拡大の恩恵は中小企業にも着実に波及しつつある。財務省の法人企業統計調査によると、2016年度の中小企業(資本金1000万円から1億円未満)の経常利益は前年度比17・3%増となり、過去最高水準にある。一方で大企業との経常利益の差は広がっており、白書では中小企業の生産性向上が急務だと指摘した。

特に重要なのがIT投資だ。近年、大企業を中心にIoTや人工知能(AI)などが採用され、競争力の源泉になっている。データの分析や連携、利活用はイノベーションを生む上で不可欠なツールとなった。経済産業省も第4次産業革命に向けた戦略「コネクテッド・インダストリーズ」を通じ、こうした企業の動きを後押ししている。

白書では老朽化設備の更新投資だけでなく、生産性向上につながる前向きな投資の必要性を指摘した。またITの導入時には、複数の企業間でデータ連携を行い、技術面で補完できる関係を築くよう求めた。例えば板金加工業の今野製作所(東京都足立区)は同業他社と共同受注体制を整備し、生産の進捗(しんちょく)や引き合い状況を見える化して受注増や効率化につなげたという。

大企業に比べてIT人材が少ない中小企業は、どう導入すれば良いか認識できていないことも少なくない。そこで白書では地元のIT関連企業が、IT補助金の活用も含めて働きかけることの重要性を説いた。またITの導入と並行して業務プロセスの見直しを実施すれば、一段と生産改善の効果が期待できると結論付けた。

中小企業が成長投資を拡大すれば好循環が続き、収益拡大につながる。経営者の積極的な判断が求められる。

(2018/4/27 05:00)

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