[ オピニオン ]
(2018/5/1 05:00)
不断の努力で誰にもまねのできない製品・技術を生み出し、あらゆる貿易障壁をはねのける力を、日本企業に養ってもらいたい。
先ごろ行われた日米首脳会談でも、米国のトランプ政権が措置した鉄鋼・アルミニウム関税の適用除外をめぐる交渉には、進展が見られなかった。貿易赤字の削減に向けた取引の材料に使おうという同政権の意図が明白なだけに、解決の糸口を見いだすのは容易でない。
ただ日本の業界では鉄鋼で25%、アルミで10%に上る関税が対米輸出に与える影響は軽微との見方が強い。数量が少ない上に大半が特殊仕様や高規格の製品で、競合品が少ないためだ。
例えば、日本が得意とする石油・天然ガス採掘用の高級継ぎ目なし鋼管は、高温高圧や腐食に強くなければならず、米国内での代替品確保は容易でない。日本の先進的なモノづくり技術が、米産業界に貢献している。
主に自動車分野で使われる高張力鋼板(ハイテン)も、日本の先進技術で大きな進化を遂げている。ハイテンは一般的な鋼板より強度が高く、板を薄くして軽量化できるため燃費が向上するが、強度をむやみに高めるだけでは加工性が落ち、成形しにくくなる。日本は高い加工性を伴うハイテンの開発で、世界を先導してきた。
しかもこの過程では自動車メーカーと二人三脚で、ハイテンという特殊な材料を使う部品の設計や、組み立て技術の最適化にも取り組んだ。こうした努力を重ね、需要家との絆を揺るぎないものにすることが、いざという時の大きな支えになる。
鉄鋼各社は日系をはじめとする自動車メーカーの要請に応じ、ハイテンの海外生産を進めている。日本の先進技術が現地での雇用創出や、環境に優しいモノづくりに貢献していることも、日本企業に対する評価を高める大きな要素となる。
保護主義的な動きがいかに強まろうと、そこに需要がある限り、たゆまぬ技術革新でそれに応える姿勢を示し、市場を切り開く。こうした挑戦を日本企業に期待する。
(2018/5/1 05:00)