[ オピニオン ]
(2018/8/2 05:00)
厚生労働省の中央最低賃金審議会(最賃審)の小委員会が2018年度の最低賃金(時給)の目安を示した。全国平均で26円の引き上げで874円。政府の目標に沿って3年連続で年3%の上げ幅となるが、中小企業への負担は大きい。政府の支援や、大企業の下請との取引慣行是正が欠かせない。
政府は16年に閣議決定した「1億総活躍プラン」で全国平均の最低賃金を1000円にする目標を掲げた。17年3月に策定した「働き方改革実行計画」でもこの目標を達成するため、毎年3%程度引き上げる方針を明記した。働き方改革関連法の成立と、今回の目安決定で目標達成に大きく前進する。
最低賃金は、国が法的強制力を持って賃金の最低額を決め、最低賃金法に基づき使用者はその額以上の賃金を払わねばならない制度だ。パートタイム労働者など非正規社員を含む全ての労働者に適用される。
毎年、地域別最低賃金は最賃審から示される引き上げ額目安を参考に、8月中に都道府県の地域別最賃審議会が金額を決定。10月から効力が発生する。
日本の最低賃金は標準的な正社員の賃金の4割程度にとどまる。最賃が上げれば、パートタイム労働者など非正規労働者の賃上げが加速。働く人の意欲が高まり、国内景気が上向く。また、正社員との賃金格差を是正し、「同一労働同一賃金」に向けた底上げも期待できる。
第2次安倍政権の発足後、年10円以上の引き上げが続き、生活保護費との逆転現象も解消している。現在の地域別最低賃金最高額は東京都の958円、最低は高知、宮崎、沖縄など8県の737円だ。ただ、目安は率での引き上げのため、地域間格差は逆に拡大している。
今回の最低賃金引き上げの目安は、大都市を抱える東京、神奈川、大阪などの27円に対し、東北地方や九州・四国各県の多くは23円にとどまる。時給最高額と最低額の差は225円で、都市への労働者の流出による一極集中に拍車をかけかねない。
地方の中小企業や地場産業への支援、人材育成が不可欠だ。
(2018/8/2 05:00)