[ オピニオン ]

社説/日銀、長期金利上昇容認 デフレ脱却へ粘り強く金融緩和を

(2018/8/1 05:00)

大規模な金融緩和策の長期化に伴って、金融機関の収益低下など副作用が深刻化していることを受けて、日銀は長期金利の上昇を一定の範囲で容認するよう金融政策を変更した。これまで0%から0・1%程度としてきた長期金利の変動幅を広げることで副作用の軽減を図るのが狙いだ。

日銀は2013年1月に消費者物価指数を安定的に2%とする目標を設定。同年3月に就任した黒田東彦総裁は異次元の金融緩和策を導入し、目標を2年で達成するとした。しかし、消費税率引き上げやデフレマインドの定着もあり、物価は上昇せず、目標は先送りされた。この間、日銀は大規模な金融緩和策を継続し、長期金利を0%程度に誘導するイールドカーブ・コントロールも導入した。

こうした超低金利政策に伴って利ざやが縮小したため、金融機関の収益は悪化、地銀の半数近くで本業の利益が赤字になるなど、副作用が深刻化した。このため、日銀は31日に開いた金融政策決定会合で長期金利の上昇を容認し、副作用を軽減するよう金融政策を手直しした。政策変更は16年9月以来のこと。

このほか、株式市場への影響を考慮し、金融緩和の一環として年間6兆円規模で購入している上場投資信託(ETF)買い入れ額を変動させる。

また、日銀は同日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で18年度、19年度、20年度の物価見通しを下方修正した。企業収益や雇用情勢は良好で、日本経済は緩やかに成長しているが、課題とされるデフレ脱却はなかなか進展しない。物価見通しの下方修正でデフレのさらなる長期化が予想され、金融緩和策の必要性は増すばかり。今後も日銀には金融緩和の効果と副作用軽減が同時に求められることになる。

長期金利の変動幅を手直ししたものの、現行の金融政策は据え置いた。これは緩和的な金融政策の継続が必要なことを物語っている。日銀は引き続き副作用に配慮しながら、粘り強く緩和策を継続しデフレ脱却に取り組んでもらいたい。

(2018/8/1 05:00)

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