[ オピニオン ]
(2019/4/9 05:00)
病人の体内に入り込み、患部に直接、切り込む。SF映画の名作『ミクロの決死圏』のような治療は、医者にとってあこがれであるらしい。
実際に医者が“手”を送り込む治療が台頭中だ。血管の中をクネクネと患部まで進むカテーテルや、小さな切開部から極小アームを入れて切除や縫合をするロボット支援手術が応用範囲を広げている。
カテーテルは心臓はじめ循環器の手術では一般的。血管が入り組んだ脳でも治療が急成長しているそうだ。脳の動脈瘤(りゅう)を早期発見して充填すればくも膜下出血を予防できる。脳梗塞で倒れた時でも血栓を素早く除去すれば後遺症が小さい。
血管の詰まりを手許(てもと)のポンプで吸い取ったり、網状の金具で絡め取って体外に排出する手術も実用化されたとか。欧米に劣後していた日本だが、医療機器大手のテルモが今春から同分野に参入。先端を柔らかにした特色あるカテーテルで追撃の構え。
施術経験の豊富な兵庫医科大学教授の吉村紳一さんは「使いやすい器具と、1分でも早い手術が大事」と強調。周辺の病院からヘリコプターなどで積極的に患者を受け入れ、救命実績は年を追うごとに高まっているという。SFとは違う形の“ミクロの施術”にエールを送りたい。
(2019/4/9 05:00)