[ オピニオン ]
(2019/5/14 05:00)
取材先の元役員が出演するオーケストラの演奏会に行く機会があった。荘厳なベートーベンの調べに聴き入りながら、機能と造形美を兼ねそなえた楽器の奥深さに改めて感心する。と同時に、以前から抱いていた素人の素朴な疑問が頭に浮かんだ。
ビオラという楽器について。オーケストラの花形楽器として多くの人が思い浮かべるのは、主旋律を奏でるバイオリンや深い音色でソロ曲もあるチェロだろうか。
そのバイオリンとチェロに挟まれ、主旋律と低音域の間の和音を支える役割を担うのがビオラ。華やかな主旋律を弾く独奏楽器ではないが、なくてはならない縁の下の力持ちだ。
小さな子ども用から大人用まで本体サイズが7種類もあるバイオリンに対し、ビオラは大人用のワンサイズ。ビオラ奏者も多くはもともとバイオリンを演奏していた。バイオリンからビオラに変えた経緯は。内心での葛藤はなかったか、と思いを巡らす。
決して楽器の格付けの話ではない。どの楽器が欠けてもあの美しい演奏は成立しなかった。新元号「令和」は海外には「ビューティフルハーモニー」と説明する。学生時代からビオラを演奏していた新天皇の即位が、“美しい調和”の時代の象徴となることを願う。
(2019/5/14 05:00)