(2020/2/25 05:00)
会社は誰のもの―。こんな古くて新しいテーマをめぐり、世界が揺れている。
近年のグローバルスタンダードと言える米国発の「株主第一主義」が同国内で見直され始めているからだ。代わって企業は株主だけでなく、従業員、顧客、社会に広く貢献するべきだとする「ステークホルダー資本主義」が急速に支持を集める。脱・株主第一主義に対する日本企業のあるべき姿とは何か。持続可能性を重視した新たな「日本的経営」を模索したい。
異変が生じたのが2019年8月。米主要企業経営者で構成するビジネス・ラウンドテーブル(BRT)が、株主第一主義の修正を宣言、1997年に定めた「企業経営者は株主に対し最上位の責務を負う」という方針を事実上打ち消した。BRT宣言に署名したのはゼネラルモーターズやジョンソン・エンド・ジョンソンといった老舗メーカーのみならず、機関投資家のブラックロックなども含まれる。この“米国ショック”は世界に広がり、今年のダボス会議でも主要議題とされた。
日本企業はどう対応すべきか。もともと日本企業はマルチ・ステークホルダー資本主義を貫いてきた。古くから近江商人の経営哲学「買い手、売り手、世間の三方よし」が広く浸透しており、BRT宣言と「日本的経営」は共鳴する部分が多い。
今、わが国が取り組むべきは新しい時代の日本的経営モデルを確立し、世界に発信することだ。関西・中部・九州・北陸の経済連合会は19年に共同で意見書を公表した。「中長期的な企業価値向上を重視すべき」とし、短期の利益志向を助長する四半期開示義務づけを廃止、コーポレートガバナンス・コードの柔軟運用、経営指標に株主資本利益率(ROE)という単一指標のみを過度に重視すべきでない、などを盛り込んだ。
これらの提言は企業の持続可能性を十分意図した内容であり、日本企業が目指すべき方向性と合致したものとも言える。公益と持続可能性を追求した日本的経営の新たな姿を国全体で考えたい。
(2020/2/25 05:00)
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