(2020/11/30 05:00)
中堅、中小企業の活躍が地域経済をけん引する。新技術、新製品の開発や成長市場への積極参入、安定した雇用の確保など、地域において多様に存在感を示している。経済産業省は2017年度から地域経済の中核企業を「地域未来牽(けん)引企業」として選定。累計で製造業など全国4743社を選んできた。経済活動は時に、コロナ禍のようなあらがいがたい環境の変化にさらされる。しかし地域未来牽引企業にも選ばれた企業群は持ち前の機動力で前へ進む。
技術開発に積極投資 新規事業を果敢に展開
NSC(大阪府豊中市、川久慶人社長、06・6862・5025)は、ガラス基板のエッチングなどで培ったケミカル加工技術を軸に事業領域を広げている。2019年にスタートした半導体関連の廃液処理事業はすでに九州地域にまで顧客が拡大。ガラス基板に化学的に微細な穴を開けるTGV加工や、リチウムイオンバッテリーの電極材料に使われる黒鉛の高純度化処理なども相次いで事業化し、次世代の技術ニーズに備える。
大板に対応するTGV
量産化が困難な技術への開発投資を惜しまず、確実に取り込むのが同社の強み。売上高の90%を占めるエッチングでは大型ガラス基板の枚葉処理を早期に実現し、顧客をつかんだ。黒鉛高純度化試作ラインは旺盛な引合いに対応し、21年2月から処理能力を現状の4倍に引き上げる。
TGV加工は大板対応や、高アスペクト比の加工が可能。後工程用の銅メッキを新開発し、サンプル提供を始めている。
フッ酸をはじめ、多様な薬液を扱ってきたノウハウはさまざまな新規事業に生きる。同社は7月、モバイル端末向け画面クリーナー「モバクリン」を発売した。除菌・抗菌などに加え、ガラス加工のプロが作ったツヤ出し性能で他社製品と差別化した。初のBツーC(対消費者)市場向け製品だが、コロナ禍にも持ち前のスピード感で挑んでいる。
素材加工技術と連携/独自技術生かして新製品開発
米島フエルト産業(大阪市都島区、米島智哉社長、06・6358・1301)は、フェルト材の卸売業として創業以来72年を数える。この間、ユーザーニーズに応えるため、素材メーカーや加工業者と連携して開発を行うビジネスモデルを確立してきた。地元関西に多い繊維や加工の企業群を組み合わせ地域産業の発展に貢献、地域未来を牽引する。
開発の代表例に軽量構造材「ミルフィーユコンポジット」がある。硬質発泡体を独自のスライス加工技術で薄膜とし極薄アルミ箔との貼り合わせと打ち抜き加工により、スマートフォンのスピーカー振動板として商品化した。
さらに、極薄発泡体シートを六角形の島状に打ち抜き加工し、粘着フィルム上に配列、転写できるようにした「ミルフィーユコンポジット・コアフレーク」を発案した。薄く、複雑な立体形状にも追従できる芯材として炭素繊維プリプレグと組み合わせる。成形品の超軽量・高剛性化を可能にする中間材として市場展開する。
一方、フィルムメーカーと連携して抗ウイルス・抗菌フィルムも展開する。用途に合わせた粘着の付与、打ち抜き形状加工、意匠性付加などユーザーニーズに合わせた製品を提供できる。新型コロナ禍で注目されるウイルス対策フィルムとして幅広い展開を目指す。
建材からエネルギー事業へ!住宅を軸に幅広く存在感
ゴウダ(大阪府茨木市、合田順一社長、072・640・2200)は、建材加工をコア事業に住宅分野で成長を続ける。近年は家庭用蓄電池の販売に力を入れ、2019年、米テスラ製家庭用蓄電池「POWER WALL」の「認定施工会社」に選ばれた。国の固定価格買取制度(FIT)で住宅向けの買い取り期間が終了し始めたのを受け、「卒FIT」に照準を合わせて新たなソリューションを提案する。
テスラ製蓄電池の取り扱いも始めた
ゴウダは住宅の建材加工から外装施工へ事業を展開。さらに屋根の施工ノウハウが生きる太陽光発電システムへと事業領域を広げてきた。創業以来の“もったいない精神”と“何でもやる”というチャレンジ精神を礎に資材、効率、エネルギーなどを有効活用する事業に力を入れている。
太陽光発電分野では10年に太陽光発電工事専門校を設置。信頼性の確立と普及促進に努めるなど、業界全体の発展につながる取り組みにも積極的だ。
販売を本格化するPOWER WALLは国内製品より大容量で安価。デザイン性も高く、卒FITの中での需要増が期待される。エネルギー電池分野では(Ⅴ)ビークルから(H)ハウスへ電気がつながる「V2H」の未来も見据え、幅広く住環境のリーディングカンパニーとして歩みを進める。
顧客のニーズに合わせて研磨布ホイールを一から製作
スリーエフ技研(大阪府門真市、札谷全啓社長、072・881・8400)は大手鉄鋼メーカーにも採用されている産業用研磨布ホイールを主力に製造販売している。研磨布ホイールは顧客の最終製品の品質向上に貢献する製品のため、顧客から要求される仕上がり品質は個々の事例で異なることが多い。特定の企業傘下に属さない独立系メーカーなので、研磨布ホイールの性能を左右するサンドペーパーをどのメーカーからも調達できるのが一番の強み。
さまざまな顧客ニーズに応える
粗さや風合い、砥粒や基材の違いなどを理解したうえで、顧客要求に合う品質の製品を作りこんでいく。このように真摯に客先の問題解決に取り組んできた結果、コロナ禍でも研磨や研磨機に関する問い合わせが増加している。問い合わせをうけて営業が聞いてきた顧客ニーズを自社の製品でどう解決できるかが腕の見せ所で、既存の製品で解決できるのか、顧客にあわせて新製品を開発していくのか、社内で営業・設計・製造・資材と各分野の担当者が意見を出し合い、顧客にとってよりよい提案を見つけていく。
このコロナ禍で営業活動が制限されている中、熟練者の経験に頼っていた製造工程をあらためて見直し、標準化を進めている。設備投資もさらに加速させ、自動化できるところは自動化して効率化したいとしている。
株式会社NSC = https://www.nsc-net.co.jp/
米島フエルト産業株式会社 = http://www.yoneshima.co.jp/
ゴウダ株式会社 = https://www.goda-j.co.jp/
株式会社スリーエフ技研 = https://tfg.co.jp
(2020/11/30 05:00)