社説/日銀と米FRB 「トランプ政策」慎重に見極めを

(2024/12/20 05:00)

トランプ米次期大統領の政策が、日米の金融政策に影響を及ぼしている。米連邦準備制度理事会(FRB)は18日、2025年の利下げペースを鈍化させる方針に転じた。日銀は19日、経済・物価が想定通りに推移しているものの、利上げを見送った。日米金融当局とも、トランプ次期政権の追加関税の行方など、米国経済の先行き不透明感を懸念する。トランプ氏の言動は予測困難で、日米金融当局には慎重な政策運営を求めたい。

米FRBは18日の会合で、政策金利を0・25%引き下げることを決めた。9月以降、3会合連続の引き下げになる。ただ米国の11月の消費者物価指数は前年同月比2・7%上昇し、堅調な個人消費を背景に2カ月連続で加速。トランプ次期政権の政策がインフレをさらに助長させかねないとの懸念から、25年の利下げ回数は2回にとどめ、9月時点で見込んでいた4回から半減させる見通しに修正した。

トランプ次期政権の追加関税は物価を引き上げ、違法移民の大量送還は米国の人手不足と人件費高騰を招きかねない。米FRBが利下げに慎重になるのも当然だ。パウエル議長は「(利下げの)プロセスは新たな段階に入った」と身構えている。

米FRBによると、25年の利下げ回数が2回に減ると、25年末の政策金利は3・9%(中央値)、物価上昇率は2・5%になるという。9月時点の数字より高くなるが、経済軟着陸の軌道内にとどまると期待したい。

ただ利下げペースの鈍化は、米長期金利の上昇圧力となり、米企業の業績への影響や円安の進行が懸念される。円安は日本の輸入物価を上昇させ、実質賃金の増加にマイナスに働くだけに、為替動向には留意したい。

日銀が19日の会合で利上げを見送ったのも、米国経済や為替動向を見極めるためだ。円安局面では、これを是正する利上げに動きやすい一方、25年春季労使交渉(春闘)での賃上げ率が不十分だったり、米国や世界経済の先行きに不透明感が強まれば利上げは実施しにくい。日銀が次回の25年1月会合でどのような判断を下すか注視したい。

(2024/12/20 05:00)

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