(2021/12/2 00:00)
8月末をピークに新型コロナウイルス感染症「第5波」の感染者数は減少を続けている。感染の拡大は落ち着き、行動制限も段階的な緩和が続く。しかしコロナ以前に戻れるかはまだ分からない。「ウィズコロナ」の中、再拡大を防ぐには、拡大期と同様に対策を講じておく必要がある。「第6波が来ないに越したことはない」と、感染症対策製品や技術を手がける企業の経営者らは口をそろえる。しかし経済再生の大きなリスクとして再拡大の可能性は払拭できない。そこでこれからの「備え」として製品・技術をアピールする。
酸化グラフェンの量産技術を確立
NSCは酸化グラフェン(GO)の量産技術を確立した。GOはリチウムイオン電池や電子情報機器の材料として使えるほか、抗菌・抗ウイルス機能が実証されており、不織布を用いたマスクやフィルター、コーティング材など、感染症対策製品関連企業からも問合せが増えている。速水真也熊本大学大学院教授らの研究で、新型コロナウイルスがGO上に吸着し、活性酸素によって分解、不活化するメカニズムが確認された。NSCが第三者試験機関ボーケンで行ったGOを塗布した不織布の抗菌性試験では、院内感染の原因となるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の不活化も確認、薬物安全試験センターでの急性皮膚刺激性試験及び急性経口毒性試験においても刺激性及び毒性がないことを確認している。
NSCでは、自社で高純度化した純度99.95%以上の天然グラファイトを原料にしており、これまでに培ったケミカル洗浄技術を応用した不純物のきわめて少ないGOが特徴。2022年1月から月産100kgの製造を開始する。
製造するGOは厚さ1.09nmの極薄シート状で、粒径は数十nm-数十μmの間で調整できる。固体もしくは水分散液で提供する。2022年1月の東京ビッグサイトで開催される『ネプコンジャパン』にも出展する。
スプレー式で手軽に施工が可能
日本ペイント・インダストリアルコーティングスの「PROTECTON(プロテクトン)バリアックススプレー」は、光触媒による抗ウイルス・抗菌のコーティングが手軽に施工できるスプレーである。塗料事業の固着技術や光触媒などを生かし、瞬時性、持続性、耐久性の三つの効果を軸に「まもりたい場所に先進ひと吹き」をキャッチコピーとしている。
同スプレーは高濃度のアルコール配合により、表面に付着したウイルスや菌を瞬時に除去すると同時に、可視光応答形光触媒の採用で、蛍光灯などの弱い室内光にも反応し、金属イオンとのハイブリッド作用により暗い場所でも抗ウイルス・抗菌効果を発揮する。スプレーで噴霧すると、厚さ数十ナノメートルの透明な薄膜を形成し固着する。塗料技術で培った同社独自の固定化技術の適用により、1ヵ月以上の効果持続が見込み、水拭き等の物理的負荷に対しても耐久性がある。
同スプレーはボトル容量350ミリリットル。2020年9月から順次投入を始めた自社ブランド製品「PROTECTON」シリーズの5種類目となる。同製品は光触媒工業会(PIAJ)の抗ウイルス・抗菌の製品認証を取得している。医薬品商社を通じ医療機関に販売するほか、独自販路の塗料販売店も利用しオフィスビルや教育機関、介護施設、交通機関などでの採用が進んでいる。
高い開発力でニーズを形に
エーディエフはストレッチャー用の飛沫防止カバーや、車いす用の陰圧ブース(写真)などを展開する。機能に独自性を志向した製品群で、組み立てや扱いやすさ、メンテナンス性などに工夫を凝らした。コロナ禍の第6波に備える製品として病院や医療系商社に提案する一方、新たなニーズの掘り起こしにも力を入れる。
同社はアルミニウムフレームメーカーとして加工部材などを販売する一方、簡易クリーンルームなど、部材を利用した独自製品を生産している。2020年にはコロナ禍をきっかけに組み立て式パーティションを開発。近隣病院に寄贈したのをきっかけにストレッチャー用飛沫防止カバーの開発につながった。
車いす用陰圧ブース「あんくま」は横浜市立市民病院との共同開発。現場の声を取り入れ、乗り降りしやすく、メンテナンス性の高い構造を考案した。陰圧の仕組みにはクリーンルームを手がけるノウハウも生きた。
ワクチン接種会場向けや卓上用など各種パーティションも手がけ、相談が寄せられてから短期間で製品化する開発力は高い評価を得ている。今後、医療系商社などとの関係づくりに力を入れ、病院で使われる製品の開発、販売を本格化する。
換気状況・混雑状況を見える化
新コスモス電機は、ガスセンサー技術を基に家庭用・産業用のガス警報器、「ニオイセンサ」など保安防災から環境管理まで幅広い分野で役立つ製品を開発・販売している。現在、コロナ禍の3密対策として室内の換気状況と混雑状況を見える化する「三密おしらせシステム 換気予報」を販売中。このシステムは、二酸化炭素(CO2)を検知する「コネクトCO2センサ」とLTE通信機能およびWi―Fi(ワイファイ)利用者数の計測機能を持った「コネクトセルラー 」の組み合わせからなる。
コネクトCO2センサは、周辺の二酸化炭素(CO2)濃度と温湿度を測定し、数字とCO2濃度に応じた4段階の色でランプ表示。CO2濃度1000PPMが換気の目安のひとつとされており、表示を確認して窓を開ける、換気扇を回すなどの換気対策を実施することが可能。
コネクトセルラーは、コンセントに差し込むだけで通信モジュールとして機能する。コネクトCO2センサで収集したデータをスマホアプリや大画面モニターで分かりやすく表示したり、換気のタイミングをプッシュ通知で知らしたりすることが可能。また、周辺のWi―Fi利用者数を計測することで空間の混雑状況を見える化する。
株式会社NSC
〒561-0845 大阪府豊中市利倉1-1-1
TEL:06-6862-5025
日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社
〒140-8675 東京都品川区南品川4-1-15
TEL:03-3740-1130
https://nipponpaint-industrial.com/
株式会社エーディエフ
〒555-0034 大阪市西淀川区福町1-1-22
TEL:06- 6474-9995
新コスモス電機株式会社
〒532-0036 大阪市淀川区三津屋中2-5-4
TEL:06-6308-2111
企画/制作:日刊工業新聞社大阪支社
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