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(2022/3/14 00:00)
武蔵エナジーソリューションズ(山梨県北杜市)は蓄電池の一種であるリチウムイオンキャパシタ(LIC)の製造において10年以上の実績を持つ。LICは高出力で即時の充放電が可能なほか、熱暴走が発生しづらく劣化しにくい。同社はこうした利点を生かした用途開発に取り組んでいる。
さらにユーザーニーズに応じたLICの最適化や、高容量化したバッテリーの開発を推進。LICのパイオニアとして蓄電デバイス市場を切り開く。
LICはリチウムイオン電池(LIB)と比べ容量は低いが、充放電の早さと熱暴走が発生しづらく安全性が高いのが魅力的な蓄電デバイスだ。正極材料に電気二重層キャパシター(EDLC)と同様の活性炭、負極材料はLIBと同様の炭素で構成されている。同社は負極にプレドープというリチウムイオンを付加する技術を施し、高出力で高容量という特性を実現した。また寿命が長く、充放電を繰り返しても劣化しにくいため、管理コストの削減や環境負荷低減に役立つという。2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向けた省エネルギー化の取り組みが加速する中、同社はLICの拡販に力を入れる。
LICの活躍の場
同社はLICの強みが生きる市場を開拓し、果敢に展開している。その一つに有軌道無人搬送台車(RGV)や無人搬送車(AGV)向けの蓄電デバイスがある。一般的な工場で多く活用される鉛蓄電池は安価で大容量なのが強みだが、充電時間が長く寿命が短い。48ボルトの鉛電池で寿命が2年、充電時間に4時間かかるという。それに対して同社のLICは8年と長寿命。充電回数が増えるが、急速充電によって1回50秒ほどで充電が完了。充電時間や廃棄ロスを削減し、工場の生産性を向上する。
自動車や公共交通機関でも同社のLICの活躍の場は広がっている。電車の屋根にLICを設置すれば電線が不要になり、景観が損なわれない。また駅に止まる度に即時充電できる。欧州やアジアで架線レスの路面電車の蓄電池の採用実績がある。
リチウムイオンキャパシタ搭載の架線レストラム
また今後普及が進むとされる燃料電池車(FCV)の補助電源としても期待できる。燃料電池はエネルギー回生ができず出力変動による負荷が大きいが、LICの採用でそうした弱点を補える。減速時の回生エネルギーを蓄電し、走行開始加速時のアシストも行いエネルギー利用を効率化する。欧州ではレーシングカーの加速時の出力補助電源に同社のLICが採用されている。
再生可能エネルギーも大きなターゲット市場の一つ。LICによって自然エネルギー発電の負荷変動を抑えることで、電力需要の平準化を図れる。ランニングコストの低減に貢献する。
燃料電池レーシングカーに同社LICが採用
今後の開発戦略
同社はLICの強みをさらに高めるべく、高容量LICの開発やLICの最適化に取り組んでいる。実用化すれば、電極材料をカスタマイズすることで耐久性や低温耐性といった任意の特性を強めることができる。ユーザーニーズに即した最適な蓄電池の提案が可能になる。
さらにLICとLIBを掛け合わせた「ハイブリッドバッテリー」の開発も進む。LICの高温耐性や長寿命、高出力という特性を備えつつ、より高容量化が可能になる。東南アジアの電動スクーター向けバッテリーとして展開を目指す。電池の弱点と言われた高温環境でも長寿命な蓄電池で、需要拡大を狙う。
3月16―18日、東京ビッグサイトで開かれる「国際スマートグリッドEXPO」で技術を紹介する。さまざまな材料メーカーと接し、開発のタネを見つける考えだ。18日13時半から15時に行われる専門技術セミナーでは、開発部の田口真氏が登壇し、「リチウムイオンキャパシタの現状と将来」と題して講演を予定している。
また各日程の13時からは、ブース内でLIC、HLID、FEMSのセミナーを予定している。セミナーの様子は武蔵精密工業、武蔵エナジーソリューションズ2社の公式YouTubeでも後日放映を予定している。
■会社概要
企業名:武蔵エナジーソリューションズ株式会社
代表取締役:髙橋 航史
本社:〒409-1501 山梨県北杜市大泉町西井出8565
URL:https://www.musashi-es.co.jp/
武蔵エナジーソリューションズのYouTube動画チャンネル
(2022/3/14 00:00)