(2023/11/27 00:00)
アルコニックスが“攻め”と“守り”の双方の姿勢で、成長を加速させている。同社はアルミや銅といった非鉄金属の商社・流通機能と、製造部門を有する特徴的なビジネスモデルを展開する。その目指す姿は生産から卸売りまでを一貫して提供する企業グループだ。成長ドライバーとしては、引き続き事業とのシナジーが見込めるM&A(合併・買収)の実施や、リサイクル事業の強化に注力する一方、企業を支える基盤となる人財を守り、育てるための投資にも柔軟な対応を見せている。
目指すはワンストップソリューション シナジー促すM&A
「将来的にはワンストップソリューションを提供し、顧客が何でも相談できる企業でありたい」-。アルコニックスの手代木洋(てしろぎ・ひろし)社長は、目指す姿をこう話す。同社は2004年にM&Aでレアメタル・レアアース関連事業を、09年には同様にM&Aで製造業へ進出するなど、M&Aを成長の推進力と位置づけてきた。22年末までに行われたM&Aは21件で、うち11社は製造業だ。
「非鉄業界と関わりがあり、足元が元気な会社であること。身の丈に合わない大きなM&Aは行わず、適正な価格で買うこと」が同社の基本的な考え方。加えて大切にしてきたのが、買収した会社の自律的な成長だ。
アルコニックスが買収しているのは地方の優良企業が多いが、こうした企業は資金面の限界や、リスクを考慮し、大規模な設備投資などに二の足を踏んでいることも多い。「グループの一員として、前向きな投資を実施してもらう。地方の優良企業にとどまることなく、アルコニックスの商社・流通機能を生かして、全国、さらには海外展開を目指してもらう」(手代木社長)と、資金、ノウハウの双方で企業の成長を支援している。
実際にグループ入りした企業では、アルコニックスの顧客基盤を生かし、クロスセルのシナジーを発揮している事例も生まれているという。
手代木社長は「(ワンストップソリューションの提供のために、)ミッシングリンクに対し、自分たちに可能性がある会社を研究し、良い機会があれば挑戦したい。従来、製造業のM&Aに関しては、金融機関の紹介などを踏まえて取り組むケースが多かった。今後は能動的にしかけていきたい」と意欲を見せる。
リサイクル事業は重要戦略 品目・品位ともに拡大
加えて、一層注力するのが、持続可能な社会の実現にも寄与するリサイクル事業だ。足元では地政学的リスクが高まる中、資源に乏しい日本では、いかに都市鉱山のリサイクルを行うかがカギとなっている。
グループ内のアルミ銅センター(大阪府枚方市)では、大阪府枚方市と北九州市の拠点で長年操業を行い、集荷力、売り先基盤を有している。グループの商社機能を生かした輸出入も柔軟に行える点が強みとなる。
「リサイクルで大事なのは、(スクラップを受け入れる)インフラの整備。従来のベーシックな集荷力を生かしながら、今後は集荷エリアという水平方向、品目及び品位という垂直方向ともに拡大させる」と手代木社長は意気込む。
これに関連する動きとして、2023年2月、北九州市に約8000坪の土地を購入し、新たなリサイクルセンターを建設している。25年1月に操業開始を予定しているが、「アルミ・銅を中心とし、従来以上に幅広い品位の資源が回収・処理できるようになるため、26年度には、九州地域での処理量は現状の倍に拡大する見通し」(手代木社長)だ。
リサイクル事業は、同社コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の投資対象領域でもある。CVCを担当する鈴木匠常務執行役員は、リサイクル量の拡大に向けて、「品位が低く、分別しにくいスクラップをいかに分別するかという技術開発が求められる」と言及。ベンチャーの力も借りながら、事業の成長を狙う。
つなごう。夢みた未来へ。
こうした“攻め”の姿勢と同様に手代木社長が重視するのが、会社の成長に直結する人への投資だ。人への投資は資本コストの低減に通ずる。近年では、ジョブ制とメンバーシップ制を掛け合わせたハイブリッド方式の人事制度の運用を開始。育児や介護で一時的に離職する社員への支援や、定年の引き上げによるシニア社員の活躍にも期待する。
賃金の面では2年連続のベアを行ったが、「来年以降もこの流れを継続させる」(手代木社長)方針。また社員の研修費用は、この3年間で3倍に拡大した。管理職の研修には役員が出席し、会社の方針を直接伝えることで研修に厚みを持たせているという。
「これらの取り組みをコスト増と見る向きもあるだろうが、その分は製品・サービスや価値を上げることで回収できる」と、手代木社長は語る。企業グループとして“ありたい姿”と、そこに至るまでの道のりのイメージはまとまりつつある。事業における攻めの姿勢と、それを遂行する人財の成長という両輪を回し続けることで、非鉄金属のワンストップソリューションプロバイダーを目指し、ひいてはアルコニックスグループのさらなる成長が期待される。
(2023/11/27 00:00)