(2023/11/2 00:00)
全国253の信用金庫が協賛する大商談会「2023“よい仕事おこし”フェア」(東京ビッグサイト)が11月21―22日に開かれる。モノづくり、グルメ、観光に関連する521社・団体が集結。いずれも全国の信用金庫の取引先で、ご当地の信金マンお墨付きの商品や技術、サービスがそろう。業界屈伸の大型イベントだ。
中小企業の技術を全国に
東京・五反田にある城南信用金庫本店のローカウンターで、高齢の女性客と若い職員が話している。客の耳には見慣れない形のイヤホンが。奈良県立医科大学の細井裕司学長が原理を発見した軟骨伝導イヤホンだ。凹凸のないボール形の先端を耳のくぼみに乗せるだけで声が聞こえる。通常タイプに比べて衛生的だとして、耳の聞こえづらい人のために役所や信用金庫、警察署などへ急速に普及しつつある。
実は、全国の信用金庫が参画し、“よい仕事おこし”フェアを主催する「よい仕事おこしネットワーク」(事務局=城南信用金庫)が開発者と導入先をつないだ。地域密着型の金融機関である信用金庫が団結し、事業者や地域の困りごとの解決に取り組んだ好事例だ。
前回は4700商談を実現
“よい仕事おこし”フェアには、軟骨伝導イヤホンのように、技術的に優れるが知名度が足りずに普及途上にあるものが多く出品される。中小企業が開発したこうした製品に光を当てて、出展者と来場者、出展者同士をつなげ、ビジネスを成長させる。2022年末の前回開催では、2日間の会期中に4700の商談を実現させた。
創業間もない東京・世田谷のチョコレート店「世田谷トリュフ」は、ここでの商談をきっかけに、歌舞伎座と大手エアラインでの販売にこぎ着けた。フェアはこうした評判を理由に年々開催規模を拡大。2012年の初回から11回目となる今年は、521社・団体が出展する。出展者数が過去最大だった昨年(464社・団体)を大幅に上回り、募集を始めてすぐに定数に達した。
首長29人が活性化事例を議論
フェアでは信金マンが推すご当地グルメやモノづくり技術のほか、会場内のメインステージでのイベントにも注目だ。11月21日の開会式には小池百合子東京都知事や地方自治体の首長、各信金理事長ら計80人が一堂に会する鏡開きが行われる。全国都道府県のお米で醸造した日本酒「絆舞(きずなまい)」が振る舞われる。絆舞は同ネットワークが企画したもので、フェアの象徴だ。
開会式後には、首長29人が参加する「首長サミット」を実施する。少子高齢化や過疎化に直面しながら地域を活性化させた成功事例を持ち寄り、首長同士が課題と打開策を議論する。誰でも聴講可能だ。企業経営者には事業のための情報収集の場になることだろう。
ステージではほかにも独自技術を有する企業のプレゼン大会が行われる。建設業の丸高工業(東京都品川区)は、施工時に騒音の出にくい工法を開発したことで、著名な大規模病院を含めて引き合いが増えている。また、軟骨伝導イヤホンの細井学長が登壇し、その原理やイヤホンの特徴を詳しく解説する。
さらに、事業承継をした若手経営者によるプレゼンも実施。会社を引き継いだ思いや将来に向けた意欲を熱く語る。
中小の困りごとを支援
原材料価格やエネルギー価格の高騰、人手不足など中小企業を取り巻く環境は厳しさを増す。12年前に責任者としてフェアを立ち上げた城南信用金庫の川本恭治理事長は、「こうした大変な時だからこそ、信金ネットワークでご支援したい」と意気込む。実際、新卒採用に苦労する中小企業が多いために、会場で中小企業と学生の出会いを促そうと、理事長自ら大学や高専などに学生の来場を打診して回った。
フェアの開催時間は11月21日が10―17時、22日は10―16時。入場は無料だ。
2023”よい仕事おこし”フェア:
https://www.yoishigotookoshifair.jp/exhibition-detail/2023yoishigoto
(2023/11/2 00:00)