ロボットと働く/NiKKi Fron ダイヤフラム製造で職人技再現

(2023/10/31 05:00)

歩留まりなど生産性50%向上

NiKKi Fron(ニッキフロン、長野市、春日孝之社長)は、本社工場のダイヤフラム製造ラインにロボットを導入し、自動化を実現した。2019年の台風19号災害からの復旧をきっかけにした設備導入により歩留まりや生産性が改善。引き合いも増えるなど成果を上げている。自動化のモデルケースとして他製品の製造ラインへの応用も視野に入れる。(長野・伊藤快)

  • ダイヤフラム製造ラインで稼働する6軸垂直多関節ロボット

NiKKi Fronは半導体や自動車などの産業分野に不可欠なフッ素樹脂(PTFE)・繊維強化プラスチック(FRP)といった最先端の素材や加工部品、機械装置を扱っている。少量多品種の高付加価値な精密加工品を請け負う同社では、加工対象物(ワーク)を自動で供給・取り出すロボットアームや協働ロボットなどを積極的に導入している。

ダイヤフラム製造ラインに導入したのは川崎重工業の6軸垂直多関節ロボット2台。ロボットを囲むように円形にプレス装置などの設備が並ぶ。ダイヤフラムは薄膜のため射出成形ができず、ロボット導入前は金型の出し入れや位置決め、時間管理を職人が手作業で行っていた。だが歩留まりが悪く、再現性も低かった。工場設備が水没した19年の台風災害からの復旧にあたり、「このラインの復旧を断念することも考えた」(春日社長)。

  • 本社工場で製造するダイヤフラム

一方で、ダイヤフラムは圧力センサーなどに使用する重要な部品であり、顧客からはラインの復旧を望む声が多く寄せられた。春日社長は今後の他製品のラインの自動化への第一歩として、ロボットの導入を伴う復旧にかじを切った。

導入における課題は、これまで属人化していた職人の技をロボットに再現させること。製品を製造しない深夜に、ロボット導入を提案した技術者が実際に職人から技を学び、ロボットでも再現できるかを検証した。春日社長は「ロボットの導入後は被災前と比べて、歩留まりと品質を含めて約50%生産性が向上した」と手応えを話す。ダイヤフラムのラインを担当していた職人は現在、別のラインの作業に就いているという。

NiKKi Fronでは新たな引き合いがあった際、生産ラインのすみ分けを行っている。短期的に量を求める「垂直立ち上げ」では、人員を夜間も投入して動かし続けるタイ工場の半自動化したラインで対応。立ち上げの開発期間を一定程度確保できる場合は、本社工場の自動化したラインが担う。

ロボットの導入には経済産業省の「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」(グループ補助金)を活用した。高度なイノベーションを組み込むことで、売り上げの回復だけでなく新分野の開拓も狙う。春日社長は「自動化したラインをどのように応用していくのか検討する」と展望する。

同社では10月に本社敷地内で新工場「Factory IPPM ST」を稼働するなど、生産・加工能力の強化を続けている。

(2023/10/31 05:00)

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