拡大する「返品」の概念 再資源化へと拡張・変容

(2024/2/7 12:00)

本講座の第44回では谷川俊太郎の短編『いっぽんの鉛筆のむこうに』についてサプライチェーン・マネジメント(SCM)の立場から考察した。その巻末に一編の詩が添えられていることをご存じだろうか。詠み人は西條八十である。本編の物語が「鉛筆はどこから来たのか」という観点から描かれていたのに対し、「つかい終わった鉛筆はどこへ行くのか」と問いかける。この極めて現代的なテーマが四半世紀以上前の国語教科書で取り扱われていたことに思いをはせつつ、サプライチェーン(供給網)を構成する活動の一つである“Return(返品)”について考察してみたい。

SCMの世界にはサプライチェーンの構造を記述するための参照枠組みがある。サプライチェーン・オペレーション参照(SCOR)モデルである。1996年に登場して以来継続的に更新されており、米ボーイングをはじめとする数千社が採用している。SCMにおける実質的な標準記述方式といえるだろう。SCORはサプライチェーンを構成する多様な活動を「Source(調達)」「Make(生産)」「Deliver(納入)」「Return(返品)」の4種類に整理し、相互の関係を記述する点を特徴とする。少々注意を要するのは「返品」だ。元々は額面通り小売店舗における返品などを意図する表現であったが、その後商品が消費されて価値が消尽した後のモノの流れを含む用語へと変化した。

2022年に更新された最新のSCOR(バージョン14、SCOR―DS)ではこれらの活動の上位概念の大幅な再整理が行われた。調達・生産は「供給サイドの活動」、受注・納入は「需要サイドの活動」、そして返品は「再生活動」として再整理された。このことは、「返品」をモノの流れとして捉えるモノはこびの観点に加えて、再資源化=モノづくり(なおし)の観点を含む概念へと拡張・変容したことを意味する。

サプライチェーンはモノづくりとモノはこびからなるエコシステムを指す概念だ。冒頭の「つかい終わった鉛筆」にもサプライチェーンがある。「どこへ行くのか?」という視座も現代のSCM実務家には求められるのである。

(2024/2/7 12:00)

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