(2015/12/30 05:00)
鉄スクラップの価格低迷が長引いている。最近、やや反発する動きもあるものの、当面は今の傾向が続きそうだ。中長期的に価格が一層低迷するとの予測もあり、そうなると鉄スクラップの産業そのものが立ちゆかなくなる恐れもある。日本が持つ数少ない貴重な資源であり、同時に重要な資源循環型産業でもある。このリサイクルの仕組みを破綻させないよう、備えを急ぐべきだ。
現在のスクラップ価格は1トン当たり1万5000円前後。1年前の約半値だ。実は2001年には一時、同6400円をつけたこともある。その当時はあまりの価格低迷で、スクラップ業者が回収業者から逆に処理費用をもらって受け入れる「逆有償」現象が起きた。その後、中国でスクラップを原料とする鋼材の需要が急増し、スクラップ価格も反転した。しかし、今は中国に代わる大口顧客は存在しない。
さらに、今後はその中国から徐々にスクラップが発生してくる。1990年代以降の高成長で建設されたインフラが更新時期を迎えるためだ。いずれは同国内で消費しきれず、海外へ輸出するようになるとみられる。しかも中国で90年代に使われた鋼材は高品質の高炉材が多く、結果的にスクラップの品質も比較的高くなる。
そうなると日本のスクラップは分が悪い。そもそも国内の需要は中長期的には人口減少などで、じりじりと減退していく。逆有償が再来し、それが定着してしまえば「リサイクルの優等生」も立ちゆかなくなるだろう。
そうした事態を避けるため、業界ではインドなどの新市場の開拓に挑戦している。だが、それだけでは不十分だろう。日本のスクラップの競争力を抜本的に引き上げる施策が欠かせない。
例えば、高炉でスクラップを最大限利用できる研究開発を進める工夫が必要だ。スクラップ使用量を増やせば、二酸化炭素排出量の削減にもつながる。高炉にとっても悪い話ではない。行政や研究機関などともスクラムを組み、業界あげて解決に取り組む必要があるのではないか。
(2015/12/30 05:00)