[ オピニオン ]
(2016/6/2 05:00)
腹周りが気になる年齢になってから、弁当代わりに豆腐をよく食べる。味や食感もさることながら、そのヘルシーさに惹(ひ)かれる。職場のある東京・人形町周辺には豆腐屋がいくつもあり、ごま豆腐の有名店や創業100年を超える老舗も店を構える。
ランチともなれば、これまたメタボ気味の同僚と連れだって買い出しである。最近のヒットは青竹を容器にしたゆず豆腐。つるんとした食感と大豆の甘いコク。ゆずと青竹の香りが重なって、舌だけでなく鼻も楽しませてくれる。
諸説あるようだが、豆腐は古代中国で生まれ、奈良時代に日本に伝来したという。長く愛され、かつ庶民生活に身近な食材だけに慣用句にもよく登場する。「豆腐に鎹(かすがい)」は効き目がないことの例え。「浮世渡らば豆腐で渡れ」とは対外的には四角四面でまじめに、しかし内面は柔軟であれとの教えだ。
「豆腐の角に頭をぶつけて死んじまえ」とは、相手の愚かさにしびれを切らした時の表現。何度も不祥事を繰り返す一部の企業をみると、ついそんな言葉が脳裏に浮かんでくることもある。
本格的な暑さに向かうこの時期。足の速い豆腐の消費期限を偽るような事件だけは勘弁願いたい。酸っぱい豆腐は、落語の中に限ります。
(2016/6/2 05:00)