[ オピニオン ]
(2016/9/12 05:00)
東京・お台場という絶好の場所にあり、3Dプリンターやレーザーカッターなどを使ってモノづくりもできる24時間利用可能なインキュベーション施設「MONO(モノ)」。2013年3月のオープンから3年半を迎え、東京都インキュベーション施設運営事業や江東区創業支援事業にもかかわる同施設が、2020年をにらんだ新たな事業構想を9日に発表しました。
その大きな目標に掲げるのが、「東京臨海部スタートアップドリームタウン」の構築。近隣の産業技術総合研究所・臨海副都心センターはじめ東京都立産業技術研究センター、大企業、金融機関などと連携しながら、臨海部をスタートアップの集積地にするというもの。さらに、目は海外にも開かれていて、アジアのスタートアップエコシステムのネットワーク・ハブとしての役割も目指すとしています。
国際化の一環としては、中国・深センのシンプリー・ワーク、インドネシアのサトリア(SATRIA)、シンガポール国立大学のブロック71といった、アジアのコワーキングスペースおよびインキュベーション施設と立て続けに連携協定を結びました。うちシンガポールのブロック71にはMONOの拠点を置き、現地の日本人に常駐してもらう計画だそうです。
MONOの後藤英逸代表はこうしたアジア広域連携の取り組みについて、「アジアのスタートアップのエコシステムに入っていって、日本の企業とアジアの企業をつないだり、アジアでのスモールビジネスネットワークを築いたりしていきたい」と意気込んでいます。
実は今現在でもMONOの入居者は国際色豊か。43の事業者のうち、中国系が4社、マレーシア、香港、韓国系がそれぞれ1社ずつ拠点を置いています。その先駆けとして2年前に拠点を構えたのが日本3Dプリンターで、それ以来、口コミで情報が広がり、ほかの外国系企業も入居するようになったということです。
中国から輸入した3Dプリンターを日本向けに改良し、販売する日本3Dプリンターを立ち上げた北川士博社長は、中国吉林省の出身。ソフトバンクの孫正義社長をはじめ日本の起業家に憧れて来日し、3年前に日本で起業。先月には3Dプリンターの累計販売台数が600台を突破しました。
「入居費用などのコストが安いし、情報がいち早く入手できる。人脈も広がりやすい」。北川さんはMONOに入居する利点について、こう話した上で、「いずれ3Dプリンターの自社開発や、3Dプリンター以外の新しい技術を日本に持ち込んで事業展開したい」と将来を見据えています。
一方、MONOの後藤さんは、とくにモノづくりには時間と資金がかかるため、個人や企業を巻き込みながら、「モノづくり関連のスタートアップにシード資金を供給して立ち上げを支援する、インパクト投資ファンドの仕組みも作りたい」と資金面での支援構想も思い描いています。
アジアの企業が日本で活躍し、日本のスタートアップがアジアで羽ばたく。そうした新たな国際化の時代に、モノづくりのスタートアップを支えるインキュベーションも、スタートアップ同様、どんどん挑戦し進化を遂げて行ってほしいものです。(デジタル編集部長・藤元正)
(2016/9/12 05:00)