社説/ホンダ・日産の経営統合 次世代車で「米中」巻き返したい

(2024/12/19 05:00)

次世代自動車へのゲームチェンジに乗り遅れてはならない。

ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入るのは、車の電動化・知能化で米中に大きく出遅れた危機感からだ。次世代車に投じる巨額の開発投資を分散し、開発期間の短縮やコスト削減を実現しなければ勝ち残れない。知能化などは自前主義では完結せず、異業種との連携も不可欠になる。両社はスケールメリットの追求と同時に新たな事業構造の構築も急ぎたい。

ホンダと日産は両社が傘下に入る持ち株会社を設立し、将来的には日産が筆頭株主である三菱自動車の合流も想定する。3社統合なら世界販売は800万台を超え、トヨタ自動車と独フォルクスワーゲン(VW)に続く世界3位に躍り出る。トヨタ自動車連合との2陣営が競い合い、EVで先行する米中を追う体制を早期に築いてほしい。

ホンダと日産は、8月に基幹部品の共通化や車載ソフトウエアなどで全面協業を打ち出し、三菱自の合流も決まった。ただ日産は世界で9000人を人員削減するなど事業再生途上で、財務の改善を急ぐ必要がある。

米中はEVや自動運転、車載ソフトウエアで先行し、電池やモーターを内製する中国・比亜迪汽車(BYD)の価格競争力が突出。日本の強みである東南アジアにも中国製が広がり、世界EV市場は台頭する米テスラとBYDが1、2位を占める。

日本政府は「SDV」と呼ばれる次世代車で、2030年に世界シェア3割を目指す。SDVは通信で車のソフトウエアをアップデートし、車体販売後も性能を向上できる。日系メーカーはSDVや全固体電池などの開発で異業種との連携も進め、国際競争力を強化してほしい。

米欧は中国製EVを排除する保護貿易を講じている。だが安価な中国製電池に依存しない供給網を築けず、米欧製EV価格は高止まりしている。日系メーカーには巻き返す猶予がある。

トランプ米次期政権の長い4年が25年1月から始まる。追加関税への影響を最小限に抑える上でも、日系メーカーは収益構造の再構築を急ぐ必要がある。

(2024/12/19 05:00)

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