[ 機械 ]

新冷媒への転換急がれる工作機械用制御盤クーラー

(2016/10/14 12:00)

 マシニングセンターを含む工作機械は、制御盤内に格納されたサーボアンプ、プログラマブルコントローラー(PLC)、インバーターなどの制御機器によりコントロールされている。これらの制御機器は発熱を伴うため、制御盤内の温度上昇による工作機械の停止や制御機器の寿命低下につながり、それを防ぐための一つの手段として制御盤クーラーがある。制御盤クーラーは圧縮機を使用した冷凍サイクルで構成され、冷媒の使用で冷却することができる。この冷媒はフロン類が一般的に使用されているが、世界的にオゾン層破壊防止、地球温暖化防止という観点から、フロン類の使用を廃止、または抑制の動きが高まり、新しい冷媒の使用が求められている。

◇オーム電機(浜松市北区) 機器事業部機器開発G 長田 英樹

冷媒をめぐる規制と対策

 フロン類の規制は1970年代にオゾン層破壊が問題化した際にその原因物質とされた時から始まる。ウィーン条約やモントリオール議定書では96年までにクロロフルオロカーボン(CFC)が先進国において全廃となっている。オゾン破壊係数の低いハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)やハイドロフルオロカーボン(HFC)が代替フロンとして利用され始めたが、後にHCFCはモントリオール議定書でオゾン層破壊物質に指定された。先進国では2020年までに生産中止されることが定められている。

 また、1990年代には代替フロンが温室効果ガスとして問題となり、97年の京都議定書により規制が行われつつある。欧州のFガス規制など、各国でのフロン類に関する規制が行われる中、日本では2001年に制定された「フロン回収破壊法」を、15年4月に「フロン排出抑制法」に改正。フロンの製造から使用、廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策を行うことになった。

 その中では「低GWP冷媒」への転換を求められている。GWPは二酸化炭素を1として、他の温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力を持っているか表した数字で、地球温暖化係数と呼ばれる。

 従来から使用されている冷媒のGWPの例として、カーエアコンに使用されているHCF―134aは1300、家庭用エアコンに使用されていたHCF―410Aは1920となっている。フロン排出抑制法ではカーエアコンは18年までにGWPを150以下、家庭用エアコンは23年までにGWPを750以下などの目標が定められている。

 また現在、モントリオール議定書の改正が検討されており、HFCの生産量の段階的削減が議論されている。今年5月に富山県で開催されたG7(先進7カ国)富山環境大臣会合の首脳宣言においても、同議定書改正の16年中の採択を支持している。

広がる低GWP冷媒利用

 GWPが1未満の「HFO―1234yf」は、「HFC―134a」と特性が良く似ており、カーエアコン用として欧州および北米で実用化されている。欧州ではカーエアコン規制により、17年1月1日から全ての新車においてGWP150以上の冷媒が使用禁止になっている。

 家庭用エアコンは「HFC―32」を使用した製品が12年に発売された。現在、日本国内では主流になっており、国際的にも広がりをみせている。このHFC-32は、GWPが677で、従来使用されていた「HFC―410A」のおよそ3分の1となっている。また、自然界に存在する物質で冷媒としての性質を持つ自然冷媒についても、さまざまな製品が開発されている。

 二酸化炭素(CO2)は家庭用ヒートポンプ給湯器「エコキュート」に使用され、広く普及してきているほか、コンビニやスーパーマーケットの冷凍ショーケースや自動販売機などにも使用されている。家庭用冷蔵庫については日本、欧州でイソブタンが普及している。アンモニア、プロパンなどを使用した冷凍機・空調機についても実用化され、さまざまな分野での冷媒の低GWP化が進んでいる。

制御盤用クーラーの低GWP化

 国際的に低GWP冷媒への転換が進む中、今後はCO2などの自然冷媒やHFO冷媒を使用した冷凍機、空調機などが増えてくると考えている。

 当社ではこの7月にHFO―1234yfを使用した制御盤用クーラーを9機種発売した。

 制御盤用クーラーの冷媒を従来のHFC冷媒からHFO―1234yfにすることで、冷却能力、消費電力、外形寸法、重量はほとんど変わることなく、従来1300であったGWPを1未満にすることができる。

 また、HFC冷媒を使用した制御盤用クーラーは、フロン排出抑制法において、3カ月に1回の簡易点検の対象となっている。工作機械ユーザーの中には、一つの工場内に制御盤用クーラーを数百台使用しているケースもあり、簡易点検とはいえ、かなりの時間と労力を要している。制御盤用クーラーがフロン排出抑制法の規制対象外になることで、簡易点検が削減でき、ユーザーにとっての維持管理費を大きく低減できる。

 今回発売した9機種については比較的小型機種であるが、今後、ラインアップを増やし、さまざまな制御盤に対応できるようにしていく。

(2016/10/14 12:00)

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