社説/新たな成長軌道(1)昭和100年を拡大均衡への起点に

(2025/1/1 05:00)

まず能登である。1日で震災発生から1年になる。この間、記録的豪雨にも襲われた。2025年は復旧・復興の歩みを進め、再生への道筋を付けたい。どの地域も取り残すことなく「新たな成長軌道」を描きたい。

「昭和100年」を迎えた。高度経済成長とバブル経済を経て、「失われた30年」で縮んだ日本経済。低成長下で講じられた低金利政策の“ぬるま湯”は企業変革とイノベーションを停滞させ、通貨価値も賃金も「安いニッポン」を誘発した。

24年は物価も賃金も金利も上昇する「成長型経済」の入り口に立った。経団連は脱炭素経営や人工知能(AI)、バイオ、宇宙、エンタメ・コンテンツを今後の成長産業と位置付ける。これら成長投資と高水準の賃上げ定着が、日本経済を縮小均衡から拡大均衡へと導く。25年をその起点の年と位置付けたい。

産業競争力を左右する次期エネルギー基本計画の方向も決まった。自給率向上に資する原子力などの最大限の活用は、AI時代の安定供給を支えるほか、貿易収支の改善により円の購買力も高めていくと期待したい。

国際通貨基金(IMF)は25年の世界の実質成長率を3・2%と見通す。懸案のインフレが後退し、米欧は景気配慮の利下げに転じた。だが保護貿易の台頭や地政学リスクは勘案されていない。トランプ米次期大統領の言動は予測不能で、世界は不確実性と向き合いつつ、経済財政運営に臨まざるを得ない。

トランプ政権の追加関税や移民送還は米国のインフレを再燃させ、中国や欧州との報復関税合戦が世界経済を減速させかねない。国際協調を軽視する同氏の政策は、国際秩序も脅かす。ウクライナの領土をロシアに割譲した停戦は、中国の台湾統一へのあしき前例となる。イスラエルへの過度な傾斜は中東情勢をさらに悪化させ、世界の分断がますます進むと警戒したい。

日本政府は25年度の実質成長率を1・2%と見込む。世界の不確実性が高まっている時だからこそ、日本企業は国内投資と企業変革を加速し、成長型経済への歩みを確実に進めたい。

(2025/1/1 05:00)

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