[ 機械 ]
(2016/11/21 05:00)
■多様化する顧客ニーズ対応
開催中の日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)で、工具各社の出展内容からは、従来の常識を打ち破るような形状や材質により、高度化・多様化する顧客ニーズに応えようとする姿が浮かび上がる。「かゆいところに手が届く」ような、きめ細かい提案で市場の拡大につなげる。
■形状に工夫
スローアウェイ(刃先交換型)チップの展示で目立ったのは、両面に刃を持つネガチップと、片面にしか刃がないポジチップの良さを組み合わせたようなチップが数多く出展されていること。1コーナー当たりの単価を落としつつ、切れ味も欲しいという顧客ニーズに応えたものだ。
住友電気工業は、くぼみを介して両面にポジチップを貼り合わせたような複雑形状チップの高能率汎用カッター「スミデュアルミルDFC」を出展。村山敦ハードメタル事業部長は「切り粉の形状と排出角度も考えワークに当たらないよう刃先を工夫した」と緻密な設計に自信をみせる。
三菱マテリアルは横から見ると「Z」の英字に見える独自形状でポジ・ネガの特徴を融合するチップを用いた汎用正面削りカッター「WSX445」の種類を拡大して披露。新たに、仕上げに使うサーメット材種を投入した。
■滑らかな削りを実現
早くから両面使いや多刃チップを国内で普及させてきたイスカルジャパン(大阪府豊中市)は、得意とするヘリカル(ねじれ)刃の両面チップ「HELI Do(ヘリドゥ)690」を展示。企画の伊藤功律氏は「ねじれ刃によって切削抵抗を分散し、滑らかな削りを実現した」と特徴をアピールする。
「軸物」と呼ばれる回転工具からも、ユニークな新提案が見られた。
三菱日立ツール(東京都墨田区)は次世代工具と位置付ける異形工具シリーズ「ガレア」を中心に出展している。異形工具は「GF1形」と「GP1LB形」。
■加工時間70%削減
工作機械メーカーの新日本工機(堺市南区)と、CAMを手がける独テビスの3社共同で製作した独BMWのバンパーの金型を展示した。既存工具では難しい曲線形状の加工が見て取れる。
4月に発売した異形工具の第1弾「GF1形」は、曲面や壁が切り立つような複雑形状の金型、部品の仕上げに向く。回転時の輪郭が樽(たる)(バレル)の形になるバレル工具だ。この特殊な形状で一動作の除去体積を大きくし、加工時間を従来比70%削減できる。
第2弾の「GP1LB形」は、刃の先端がレンズのように見える異形工具だ。
刃の両端は樽形をしていて、刃先が球状のボールエンドミルに比べ、一度に大きく削り、加工時間を3割削減できる。ボンネットやドアなどの緩やかな曲面のあるプレス金型に向く。異形工具は今後の伸びが期待できるが、今のところ対応するCAMがドイツの「テビス」などに限られるのが難点。「CAM販社とセミナーを開き、認知度を高めたい」(同社)と普及に努める。
■多くの素材、切削可能
OSGはJIMTOF開催に合わせて発売した「超硬ADドリル」をアピール。高い対摩耗性と耐熱性に加え、じん性にも優れる「イージアスコーティング」と、切りくずの排出性を向上させた溝形状で低炭素鋼から炭素鋼、合金鋼、ダクタイル鋳鉄といった多様な素材の切削に対応させた。また、先端が平らなフラットドリルも紹介。あける穴の先が平坦になるので、タップ工具と併用してねじ切りをする場合、穴の底のギリギリの所までネジを立てられる。
■砥石一つで仕上げまで
砥石(といし)業界で目立ったのが、歯車向けの提案だ。最大手ノリタケカンパニーリミテドは、ネジ形状の大型砥石で複数の歯を連続で研削する「創成研削」用の砥石を五つ並べた。
中でも珍しいのが、一つの砥石にビトリファイド(セラミック系結合材)の部分とレジノイド(樹脂系結合材)の部分がある創成砥石。それぞれ粗い砥粒と細かい砥粒を使っており、1本の砥石で粗加工から仕上げ加工までカバーできる。
ニートレックス(愛知県武豊町)は、歯車の表面を精密仕上げする砥石「ギアフィニッシュ」を出品した。立方晶窒化ホウ素(CBN)を塗布した研磨布を積層し、創成砥石状に仕上げた。
触るとふわふわしており、独特な感触。ちょうどバフ研磨のようなイメージで、歯の表面を2―3マイクロメートル(マイクロは100万分の一)とごく微細な量だけ削り取るという。エーアイ・マシンテック(愛知県安城市)の歯車研削盤「歯磨きさん」と組み合わせて自動車メーカーに売り込みを進めている。
歯車向けの砥石が目立ってきた理由について、ニートレックスの武田幸久社長は、「車の燃費や静粛性を巡る競争が激しくなるなかで、変速機の歯車の仕上げ加工に注目が集まっている」と説明する。
(2016/11/21 05:00)